タンゴマの旅日誌

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キャラスト今昔物語 番外編「ゲイングランドと仮想現実」


キャラストプレーヤーの皆さんにはお馴染みのバグ。
突き詰めて言えばプログラムのミスによる欠陥でしかないのですが、ゲーム自体が人間が作ったものである以上どうしても避けて通れないものであり、製作者が仕様と言い張ってしまえば仕様になったりするのもバグの厄介なところ。
中にはちょっと笑えるものもあったり攻略に役立つものもあったりで完全には憎めないものでもあります。

そして中には致命的なバグがありながらもむしろそれによって名作と呼ばれるようになったゲームがあります。

それが「ゲイングランド」で、このゲームが名作と呼ばれるようになったのには3つの理由があります。

その理由のうちの一つが「ストーリー」です。



時は1988年。
当時はスーファミもまだ出ておらず、家庭用ゲーム機はまだ発展途上でゲームと言えばパソコンゲームかアーケードゲームが最先端だった時代。
今ではゲーセンと言えばクレーンゲームやプリクラ、音ゲーやレーシングゲームなどの大型筐体モノしかありませんが、当時はゲーセンではアクションゲームを100円入れてプレイするのが主流でした。

お金を払ってプレイして死んだらそれまでという真剣勝負。メーカーは簡単にクリアされてしまうとインカム(収入)がすぐに落ちてしまうため面白くてやりごたえのあるゲームを作る事に邁進し、プレーヤーはクリア目指して腕を磨く。昔のゲーセンはそんな武士の真剣勝負のような場だったのです。

そんな時代にセガが発売したアーケードゲームが「ゲイングランド」です。

ストーリーはpixiv百科事典から引用。

「あまりに完成されすぎた長い平和は人々から本能を奪い、逆に世界を腐敗させていった。 
そのことを重く見た統一政府は仮想空間戦闘ゲーム『ゲイングランド』を開発、これで遊ばせることにより本能の刺激を試みた。 
しかし突如システムが暴走し、ゲイングランド内に多くのプレイヤーが幽閉されてしまう事件が発生する。 
何度も救助を試みるものの一向に脱出者が現れない為、次に救助が失敗した場合最後の手段としてプレイヤーもろともゲイングランドを破壊することが決定された。 
そして、3人のプレイヤーが最後の救助者として送り込まれていく。 

現在で言えば、事件が人為的でないソードアート・オンラインとも言える。 」


スピルバーグの最近作「レディ・プレイヤー1」や
HUNTER×HUNTERのグリードアイランド編など、閉じ込められた仮想空間からの脱出というテーマは今でこそ定番ではありますが、30年以上前にこのテーマを取り入れた事は非常に斬新で多くのプレーヤーに強烈な印象を与えました。

ちなみに更に遡る事15年前の1973年に、「ER」の製作者や「ジュラシック・パーク」の原作者としても有名なマイクル・クライトン氏原作の「ウエストワールド」と言う映画があり、設定が酷似しているためこれがゲイングランドの元ネタだろうと言われています。

もっとも映画ウエストワールドが公開された当時は仮想現実という概念がまだ一般的ではなかったため、舞台はロボットがキャストとしてお客さんの相手をする巨大遊園地という設定でした。

しかし仮想現実という概念自体はその更に前からあり、「ブレードランナー」などで有名なSF作家フィリップ・K・ディック氏が仮想現実をテーマにした短編「追憶売ります」を1966年に発表しています。

が、ディック氏の多くの作品のテーマは「確固たる現実など存在しないという疑い」であり、代表作である「高い城の男」は第二次世界大戦で枢軸国(ドイツ)側が勝利した世界の中で連合国(アメリカ)側が勝利した仮想世界を描いた小説を巡る話だし、ブレードランナーの原作となった「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」は脱走したアンドロイドを狩る捜査官である主人公が自分は本当に人間なのかそれとも実はアンドロイドなのかというアイデンティティに苦悩する話です。

仮想現実という概念はディック氏のテーマを描く手段の一つにしか過ぎなかったのです。

ところがコンピュータやCGの進化に伴いバーチャルリアリティという概念が現実味を帯びてゆき、「追憶売ります」が1990年にアーノルドシュワルツェネッガー主演のB級映画「トータル・リコール」として映画化され、その後「マトリックス」が大ヒットした事で仮想現実という概念は一般的になっていきました。

ちなみにディック氏はSF小説の権威であるヒューゴー賞を受賞するなどSF作家としては名声を得ていましたが、あくまでいちSF作家としてしか扱われず原稿料も安く、ベストセラー作家のような生活とはほど遠く存命中は常に貧乏だったそうです。
1982年、奇しくも自身の初映画化作品であるブレードランナーの公開直前に脳梗塞により52歳の若さで世を去ります。
ディック作品は前述の2つ以外にもトム・クルーズの「マイノリティ・リポート」やキアヌ・リーブスの「JM」「スキャナー・ダークリー」など数多く映画化されており、存命なら富と名声を得て晩年を送れていたはずなのに。

そのひと世代後のSF作家であるマイクルクライトンが成功を収めたのと対照的に、悲運の天才と言わざるを得ないのが残念ですね(/ _ ; )


話がだいぶ逸れましたが、ゲイングランドにそんな当時一般的ではないテーマを取り入れて現在でも十分に通用するストーリーにした事は製作者のセンスとSFについての造詣の深さを窺わせるポイントであり、時代を先取りしたことによって今でも語り継がれる名作となりました。

次回はゲイングランドが名作となった理由の一つ、「ゲーム性」について書きたいと思います。

ー続くー


タンゴマ

コメント

この発言は削除されました(2022/02/02 02:00) 1

2

イアルのブロガー

ナポリ

ID: v8ikkh8x6a4s

うぅ…続きが気になるます~
気になるますぅ~~~!!

3

圧倒的支持率

タンゴマ

ID: n9tkjvq6hd3s

>> 1
ありがとうございます^ ^
三部作の予定ですが既に二作目を書いてしまったので残るは一つ。
明日のメンテ中にでも書ければ良いなと思っています。

4

圧倒的支持率

タンゴマ

ID: n9tkjvq6hd3s

>> 2
本当はキャラストのバグ(?)について書こうと思っていましたが、書いてるうちに本来の目的を忘れるくらい脱線してしまいました。
待て次号!