タンゴマの旅日誌

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キャラスト今昔物語 番外編「ゲイングランドと背中語り」


キャラストと関係のあったりなかったりする昔話を書くこのシリーズ。今回もゲイングランドの話です。

ゲイングランドが名作と呼ばれる理由の二つ目。
それがゲーム性です。

ゲイングランドのゲームシステムは、俯瞰視点から一画面で描かれたフィールド上に敵が配置されており、制限時間内にその敵を全て倒すか画面上部の出口から手持ちのキャラクターをすべて脱出させる事でクリアとなります。

ステージは先史時代、中世、近代、現代(近未来)の4つの時代にそれぞれ10ステージずつ配置されており全40ステージ。

最初のステージである先史時代は広大な平原だったりしますが、先のステージに進むにつれ砦が出現したり現代面では障害物の多い迷路のようなステージになったり戦車やミサイルポッドが出現したりと時代と共に難易度が上がっていきます。

プレイヤーキャラクターは槍や弓を武器とする先史時代、剣と魔法を武器とする中世、拳銃や手榴弾を武器とする近代、ライフルやマシンガンを武器とする現代、ロケット砲などの銃火器を武器とする近未来の5つの時代に対応したキャラが4人ずつ用意されており全20キャラクター。

武器によって攻撃範囲や射程、高地にいる敵を狙うことが可能などそれぞれに個性が設定されています。キャラストのASやNSみたいなものですね。
また移動速度もキャラごとに違い、それを踏まえて出すキャラを選択する必要があります。

最初から使用可能なのは先史時代のアスラ(武器は槍)、近代のベティ(拳銃と手榴弾)、現代のジョニー(ライフル)の3人のキャラクターのみで、残りはステージ上に捕虜として配置されています。

捕虜に接触するとプレイヤーの後をついてくるようになり、そのキャラを連れて出口から脱出する事で次のステージからプレイヤーキャラとして使用可能になります。

こうして手持ちのキャラを増やしながらステージを進めていくのですが、制限時間の都合上ステージが進んで手持ちキャラが増えていくと全員脱出してのクリアは不可能となり、「捕虜を救出→敵を殲滅してクリア」が基本ルーティンとなります。

ちなみに操作しているキャラクターが敵にやられてしまった場合、すぐには消滅せずにその場で捕虜と同じ扱いになり、次に出すキャラで救出する事が可能です。

しかしそのステージに捕虜状態のキャラクターが既に存在していた場合、上書きされるように先に存在していたキャラクターは消えてしまいます。

「火力の高いキャラで敵の数を減らしたところで捕虜を救出に向かう」戦術を適用した場合、現代系などの火力の高いキャラは足が遅い傾向にあるので敵の攻撃を避けづらく、ミスしてそのキャラがやられてしまうと先に存在していた捕虜が消えてしまう上に火力がなくなってクリア出来なくなってしまったりします。

別の戦略として「足の速いキャラで捕虜を救出した後火力の高いキャラで敵を殲滅する」戦術を適用した場合、足の速いキャラは総じて火力が低いため命懸けの救出となります。

また制限時間がかなりシビアなため捕虜を救出してから敵を殲滅することが困難な場合には「あえて救出せずに敵の殲滅に専念する」などの選択をせざるを得ない場合もあります。

実際問題「全員救出してキャラをコンプリートした上でのクリア」は不可能と言って良い難易度であり、性能の高いキャラや自分が使いやすいキャラ、またその後のステージで必須となるキャラを取捨選択しながら進めていく必要があります。

この戦略性の高さは他に類を見ないものであり、先述のストーリーと難易度の高さも相まってプレイヤーを熱中させました。

当時ゲイングランドはそのシステムからも唯一無二のゲーム性を持つ異色のゲームだったのです。



ゲームの黎明期にはハードの制約から「スペースインベーダー」のように一画面固定で表現されるフィールドをステージとしてプレイするゲームしかありませんでした。

その後「ピットフォール」のような画面切り替え型や「カラテカ」や「スパルタンX」のような画面スクロール型のアクションゲームが登場し、1985年のスーパーマリオの大ヒットによってゲームは完全にスクロール型が主流になります。

画面固定型のゲームは戦略性の高いゲームには向いているのですがハードの制約でどうしてもフィールドが狭くなってしまうため、パズルゲームなどの限定されたジャンルでしか見ることがなくなっていきました。

またキャラクターを魅力的に描いたりリアルに動かそうとした結果キャラクターが大きくなっていく傾向もあり、特に美少女キャラを主人公にしたゲームはどんどんキャラが巨大化していきました。

しかしゲイングランドはセガの開発した最新型のゲーム基盤「システム24」を搭載し、それまでの基盤とは桁違いの解像度によって「小さいキャラをリアルに動かす」事が可能となり、一画面で表現できるフィールドが劇的に広くなったのです。

そうして戦略性の高いゲームを完成させるとともに、「一画面でこんなに広いの?!」という新鮮な驚きをプレイヤーに与えてくれた事もゲイングランドの名作たる理由の一つです。

またドット絵で描かれた小さいキャラクターがリアルにアニメーションする姿と、表示されるアイコンの絵柄が洋ゲー調のカッコいいキャラクターであることのギャップがプレイヤーの想像力を刺激する魅力に溢れたものでした。

そのキャラクターも性能的に使えないと思われていたキャラクターが先々のステージで大活躍したり、序盤で大活躍したキャラクターが終盤で特攻要員としてドラマティックな自己犠牲を果たしたりと、狙ってか偶然の産物かはわかりませんがプレイ上の戦略とストーリーが見事に融合してプレイヤーを震えさせました。


ステージは進行に合わせて時代が進んでいきますが、初期キャラクターに現代系が含まれている事からわかるようにキャラクターは必ずしも時代に即していないのもポイントです。

先史時代の敵をライフルで倒したり、逆に戦車を槍や魔法で破壊したりするのもなんとも言えないロマンと快感がありましたw


敢えての後述になりましたが制限時間内に敵を倒しきれなかった場合やキャラクターを全て脱出させられなかった場合、即ゲームオーバーとはならず脱出に成功したキャラクターのみで次のステージに進むこととなります。

その時点でゲームクリアは限りなく不可能な詰み状態になるのですが、生き残ったキャラでどれだけ進められるかというチャレンジが出来ることもこのゲームのサービス精神であり、デスゲーム的なストーリーに深みを与えていたのも大きなポイントですね。


この翌年「チビキャラが広い一画面をフィールドとする」画面固定型のアクションゲームとして、セガが同じシステム24基盤を使った「クラックダウン」というゲームを発売しました。

ゲームシステム自体は良く出来ており、初期のメタルギアシリーズに近い面白さはあったもののヒットせずに消えていったのはゲイングランドのようなストーリーが無かったからではないかなと思います。

その後ゲイングランドのような画面固定型のゲームはリリースされず、ゲームはやはりカプコンの「ファイナルファイト」に代表される大型キャラクターを動かすスクロール型アクションゲームが主流となり、その後ストⅡの大ヒットによって対戦格闘ゲームがゲーム業界を席巻するのですがそれはまた先の話。


ちなみにゲイングランドにはエンディングを除いてイベントシーンやキャラクター同士の会話などは一切なく、プレイ前のデモシーンのわずかな情報と自ら動かすキャラクターの背中を見てそのストーリーを紡いでいく実に硬派なゲームでした。

そんなストーリーとゲーム性が奇跡の融合を果たしたゲームとしてプレイヤーを熱中させたゲイングランド。
筋金入りの高難易度に挑むプレイヤーたちがクリアに向かって腕を磨く中、ある衝撃の事実が発覚するのです。

ー続くー


タンゴマ

コメント

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この発言は削除されました(2022/02/02 02:00) 2

3

圧倒的支持率

タンゴマ

ID: n9tkjvq6hd3s

>> 2
ありがとうございます^^
下手すりゃ、いやしなくても皆が生まれる前のゲームだったりしますからねw
かつてのゲーム業界の空気やプレイヤーの熱さを知ってもらえれば幸いです。