島津豊久の旅日誌

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Episode 16「ミグノノ王朝の樹立~精鋭部隊モ・フリタス戦記3(偽)~」

~これまでのあらすじ~

ヴァルメル陥落に成功したゲッシーの精鋭部隊モ・フリタスに本国から新たな指令が下る。
それは、マグマミアに侵攻しルーヴェンを制圧、そこを足がかりに自由都市ネロを攻略せよというものだった。
若き将軍ミグノノは、部隊をマグマミアに進めようとしていた。
一方、ヴァルメル滅亡の知らせを受けた列強各国は、直ちに派兵を決定した。
オーク、エルフ、ドワーフ、ギュリアム、マグマミア、これら全ての強国が、主を失ったヴァルメルの領土を奪うため一斉に動き始めたのだ。
イアルは今、戦乱の時代を迎えようとしていた。

Cross Story (偽)

ロロタタ「ミグノノ!ねえ、ミグノノ!そっちはルーヴェンじゃないわよ。こっちの道よ。」

ミグノノ「ボクはルーヴェンには行かないよ。ヴァルメルに行ってエミリーさん達を助けないと。」

ロロタタ「ええ?!本国の指令を無視したら、きっと酷いおしおきされるわよ!」

ソフィア「そこの者、止まれ!どこに向かっている。名を名乗れ。」

ミグノノ「ボ、ボクはミグノノっていいます。この子はロロタタ。ヴァルメルが大変なことになったって聞いて、それで、エミリーさんの様子を見に行こうと思って。」

ソフィア「何?貴様、エミリー殿の知り合いなのか?…エミリー殿は今、ヴァルメル復興の為に忙しく働いておられるからな、行ってもたぶん会えんぞ。」

ミグノノ「良かったー!エミリーさん、無事なんですね!」

ソフィア「ああ。エミリー殿と我ら黒角騎士団は、あの時ギュリアムの国境に出兵していたのでな、難を逃れたんだ。」

ミグノノ「でも、ヴァルメルが酷いことになっちゃったって聞いて。」

ソフィア「まあ、王都はあの有様だ。ウォルリック王も行方不明だしな。だが、あのドラゴンが現れた時、市民は散り散りになって逃げ出したので、怪我人はほとんど出なかったんだ。」

ミグノノ「そうだったんですか。よかったー。…あのう、ボクに何か手伝えることはありませんか?」

ソフィア「そうだな。王都では復興工事が進んでいる。人手が足りないから手伝って貰えるとありがたい。」

ミグノノ「わかりました。ボク達、すぐにヴァルメルに向かいます。」

ソフィア「感謝する。引き止めて悪かったな。」

ヴァルメルの城下では、いたる所で復興工事が始まっていた。
ミグノノ達は、寝食を忘れて土木工事を手伝い、大きな石を運んだり、積み上げたりした。
また、食料不足を知ると、大通りの周囲にポムムの種をまいて育てはじめた。

それから半年ほど経つと、王都は徐々に復興しはじめていた。
人一倍働くゲッシーの若者は、住民からの尊敬を集め、すっかり人気者になっていた。
やがて、通りに植えたポムムの木が育って実をつけるようになると、その通りは「ミグノノ通り」と呼ばれるようになった。
ミグノノ通りには、復興のシンボルとしてミグノノの大きな銅像も建てられた。

そんなある日、ミグノノが工事から帰ってくると、この国の大臣が待ち構えていた。

ミグノノ「ボクに何かご用ですか?」

大臣「実は、折り入ってミグノノ様にお願いがあるのです。単刀直入に言いましょう。あなたにはこの国の王になって頂きたい。」

ミグノノ「ええ?!」

大臣「あなた様もご存知のとおり、ウォルリック王もヴァーミッド卿も行方不明。この国を再興させ、国民を一つにまとめるためには、新たな王の力が必要なのです。」

ミグノノ「いやいや!何言ってるんですか!見てのとおり、ボクはゲッシーですよ!」

大臣「それは存じております。しかし、今やヴァルメルで貴方の人気は絶大です。国民は皆、貴方を”復興のシンボル”と慕っている。貴方をウォルリック王の異母兄弟ミグノノ=グロスカッドということにするのです。これなら国民も納得する。エミリー卿もそれをお望みです。」

ミグノノ「いやいや!それは、かーなーりー無理があるでしょ。ボクは、ゲッシーですよ!」

大臣「あなたには、先々代の王グルガン2世の面影がある。きっと大丈夫でしょう。」

ロロタタ「まあ!ミグノノが王様だなんて。ウフフ。」

ミグノノ「ウフフじゃないよ!ロロタタも何か言ってやってよ!」

大臣「ロロタタ様には、行方不明のエレノア姫様になっていただきます。兄妹ともにゲッシーであれば、話の真実味が増すというものです。」

ロロタタ「ええ?!何それ?!私もお姫様なの?!ミグノノがお兄さんなの?」

大臣「さあさあ!そうと決まれば、ミグノノ様、エレノア様、お城に向かいますぞ。」

ミグノノ「イヤだあああ!やめてよー!誰か助けてー!」

こうして1ヵ月後、再建されたヴァルメル城では、盛大な戴冠式が開催された。
ここに、四代目グロスカッド王、ミグノノ=グロスカッドが誕生した。
ヴァルメル新時代のはじまりである。

(つづく)

写真:再建された王宮にて。ヴァルメル新王ミグノノ=グロスカッド

島津豊久

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