タンゴマの旅日誌

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キャラスト今昔物語 番外編「ウォルリックとエルリック」


キャラストと関係のあったりなかったりする昔話を書くこのシリーズ。2年ぶりの番外編です。



今回のイベントはユウリとウォルリックがメインとなってストーリーが進みましたね。
ユウリはキャラバンに乗ってる精霊という便利な立ち位置のキャラクターなのでこれまでも出番が多かったのですが、ウォルリックは出てくる時はほぼ正気を失った状態だったのできちんと人格を持ったキャラクターとして描かれたのは今回が初じゃないでしょうか。
導入こそ牽強付会な感がありましたが、お馴染みのキャラバンメンバーとの絡みもあって最終的にはよくまとまった良いストーリーだったと思います。
立場的にキャラバンに乗ることはなさそうですが一部に熱心なファンがいるキャラクターなのでこれからも登場して欲しいですね。

さてそんなウォルリックを見て思い出すのが「エルリック・サーガ」の主人公エルリック。
名前も似てるし武器も大剣だしすぐ操られちゃう王様という点で共通点が多く、ウォルリックの元ネタになったのではないかと推測しています。
今回はそんなファンタジー小説のレジェンド「エルリック・サーガ」をご紹介します。



人間が世界に蔓延する遥か昔から世界最強の国家として君臨してきたメルニボネ王国。
その王国の住人メルニボネ人は混沌の神々や精霊と契約を交わし、ドラゴンさえ使役する種族であった。
しかし彼らはその高い知性とは裏腹に戦争を好み、掠奪や虐殺を悦びとする残虐な種族だった。

そのメルニボネの皇子として生まれ、王となったエルリックは白い肌と赤い瞳を持つアルビノであり、薬や魔術に頼らねば生きられない虚弱な身体であった。

戦争よりも書や学問を好み、「哲人皇帝」と呼ばれるエルリックであったが従兄弟の皇子イイルクーンはエルリックの治世に不満を持ち、自らが王となってかつての獰猛な王国を取り戻す野望を抱いていた。

メルニボネに人間の軍勢が船団を率いて迫りつつあるとの報を聞いたエルリックは自ら軍を率いてこれを退けるが、イイルクーンの策略にはまり荒れ狂う大海に投げ出される。

メルニボネに戻ったイイルクーンはエルリックが死んだと告げ、喪に服した後に王の即位を宣言する。
しかしそこに現れたのは死んだと思われたエルリック。
彼は海の精霊の王とメルニボネ人との旧き約定によって命を拾われ、命からがら王都に辿り着いたのだ。

エルリックの愛する妃サイモリルはイイルクーンの死罪を望むがエルリックは死罪ではなく追放の刑に処した。

しかし憎悪に狂ったイイルクーンは王族の血の力で強大な魔物を召喚し、王都を蹂躙した挙句サイモリルを奪い去ってしまう。

自らの甘さと力の無さに絶望したエルリックは混沌の神々の一人で戦争の神でもあるアリオックを召喚する。

「剣の王」とも呼ばれるアリオックはエルリックに一振りの大剣「ストームブリンガー」を与える。

この剣は殺した相手の魂を啜り、使い手にその力を与える魔剣であった。

イイルクーンからサイモリルを奪還し、ストームブリンガーの力によって薬や魔術に頼らず生きられるようになったエルリックだったが、常に血を求めるストームブリンガーの意思により忠実な臣下をも自らの手で殺めてしまう。

愛する妻サイモリルをも手にかけてしまうことを恐れたエルリックは玉座を棄て自らを王国から追放し放浪の旅に出る。

その先には更なる悲劇と過酷な運命の正体が待ち受けていた…

(エルリック・サーガ第一巻「メルニボネの皇子」)


ウォルリックの名前と操られる王様という設定、ゾルバの戦闘民族とそれを好まない王様、そして輪廻の中で戦う設定はこの作品からインスピレーションを受けたのかなと感じました。


エルリックサーガはイギリスの作家マイクル・ムアコックが1961年に書いた「夢見る都」に始まり、1965年に一旦完結しますがその後も30年に渡り加筆と再構築がなされています。

日本では1980年代前半にハヤカワSF文庫として刊行され、ファイナルファンタジーシリーズのキービジュアルを手掛けた事で日本ファンタジー界を代表するアーティストとなった天野喜孝氏のカバーイラストも相まってRPGファンの間で人気となりました。


しかしこのエルリックサーガ、とにかく読みにくい。

80年代後半になると水野良氏の「ロードス島戦記」、神坂一氏の「スレイヤーズ!」、深沢美潮氏の「フォーチュン・クエスト」のヒットによりファンタジー小説はライトノベルの代名詞になるのですが、それ以前のファンタジー小説というのは翻訳版がほとんどで文章がガッチガチに硬くて難解なものが多く、軽い気持ちで手に取ったオタク少年に挫折を味わわせるに充分な読みにくさでした。

自分も読んだのは中学生の頃だったと思うのですが、とにもかくにも読むのに苦労した。
しかしその内容は苦労して読む価値はあったなぁと思います。

以前の日誌(https://masters.caravan-stories.com/posts/waeinebe)でも少し触れましたが、それまでの古典的なヒロイックファンタジーとは違い、善と悪もしくは神と悪魔との戦いといった単純な二元論ではなく《法》と《混沌》の神々に翻弄されるアンチヒーローとしての主人公像はその後のファンタジー界に絶大な影響を与えています。


明言はされていませんが鋼の錬金術師の主人公の苗字がエルリックなのもこの作品から来てるのかな?


その後ムアコック氏はエルリックを含めた主人公が輪廻の中で永遠に戦い続けるという設定の作品群をエターナルチャンピオンシリーズとして今でいうマルチバース世界を作り上げます。

その中でエルリックと並ぶ長編シリーズの主人公「紅衣の公子コルム」は失った右眼と左手の代わりに死せる神の眼と腕を持つという、厨二病患者が憧れる設定のはしりですねw


そんな現代ファンタジーのルーツとも言えるエルリックサーガですが、1980年代の本はもちろん絶版、15年前にも新装版が復刊されましたがそれも絶版。読むには古本を探すしかない状況ですが、フランスのグラフィックノベルとして角川書店からフルカラーコミックが刊行されています。

しかし第一巻は既に品切れで紙の本はプレミア価格に。泣く泣く電子書籍で買いましたがその内容の素晴らしさゆえに紙の本で欲しかったと枕を涙で濡らしています。

二巻ならまだ紙で買えます!
転売ヤー許すまじ!


タンゴマ

コメント

1

イアルの冒険者

Kengoh

ID: pjh8qdbsn4wn

今流行らないんですかね、こういうのは

私も前にケイン・サーガを探しましたが翻訳されてるかも不明でした

2

圧倒的支持率

タンゴマ

ID: n9tkjvq6hd3s

>> 1
不勉強にしてケイン・サーガは知らなかったのですが30年前に一冊だけ創元推理文庫で出てたみたいですね。
古本なら捨て値で買えるようなので買って読んでみようかな?

ファンタジーものは現代小説と違って時代関係なく読めるのがいいですねw

3

イアルの冒険者

Kengoh

ID: pjh8qdbsn4wn

>> 2
ありがとうございます、古本屋で買って実家にあるのが最後かぁ、読み返したくなってきたな

余談ですが、うちのキャラバンにいるシャドウナイトの名前はイイルクーンです(*´∀`*)

4

圧倒的支持率

タンゴマ

ID: n9tkjvq6hd3s

>> 3
時空を超えたエルリックファンが居たとは嬉しいです!
ビーストは名前つけて遊べるのがいいですよね〜愛着も湧くし( ´∀`)