島津豊久の旅日誌

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Episode 43「マルポポ攻防戦(上)~精鋭部隊モ・フリタス戦記15~(偽)」

~これまでのあらすじ~

ミグノノたちがマルポポが見渡せる丘に到着すると、ダークエルフの軍勢がマルポポの正面で布陣を完了させているのが見えた。
中央に歩兵隊8万、両翼にナノコーン騎兵隊2万の合計10万の大規模部隊だ。
一方、マルポポ樹根街の入口付近にはマググラ率いる戦楽隊1,000が布陣し、ダークエルフの軍勢と対峙していた。
ゲッシーたちは100倍の数の敵に対しどのような戦いを見せるのだろうか?

Cross Story(偽)

ミグノノ「敵はすごい数だね。...ボクたちに何かできることがあるのかなあ?」

ロロタタ「ミグノノ、見て!キャラバンよ!」

ロロタタが指差した方向を眺めると、ダークエルフ歩兵隊の最後部に、いかにもダークエルフっぽい真っ黒なキャラバンが居るのが見えた。
さらに、キャラバンの周囲には、3匹の大きなマンティコアがうろついており、キャラバンを守っているようだった。

ポルカ「ミグノノ様!あのキャラバンに取り付けられている大砲は”パニッシャー(神罰砲)”ですぞ!あれは、古代神々の戦争で用いられた別名”メギドの炎”と呼ばれる大砲でございまして、その威力は、いくつもの古代都市を滅ぼしたという言い伝えがあるほどでございます。」

ミグノノ「ええー?!そんなのがマルポポに撃ち込まれたら、ひとたまりもないじゃないか!」

ポルカ「しかし妙ですな。神罰砲は、確かエルフの王家が代々封印してきたはずでございますが、それが何故、このような所にあるのでございましょうか?」

ミグノノ「神罰砲に、マンティコア。...まちがいない。アルアリアが、ダークエルフのゲッシー領侵攻に手を貸すというのは、このことだったんだよ。」

ミサクラ「!!」

ミグノノ「ミサクラさん、どうかしたの?」

ミサクラ「この周囲のスフィラが、あのキャラバンの方角に向かって流れているようです。」

ポルカ「これは!...間違いありませんな。おそらく神罰砲が起動したのでございましょう。」

ミグノノ「大変だよ!大砲が発射される前に、急いで破壊しないと!マルポポが無くなっちゃうよ!」

ミグノノは精鋭部隊モ・フリタスの兵士たち全員に注目させると、重い決断を伝えた。

ミグノノ「...できるかどうかわからないけど、これからボクたち全員で突撃して、大砲が発射される前に、あのキャラバンを破壊しよう。」

兵士たちは無言でうなずき、皆覚悟を決めたように、ポムムの枝でつくった木刀や槍を握り締めた。

ミサクラ「お待ち下さい、閣下。これだけの量のスフィラがあの一点に集中すると、あるいは...。」

ポルカ「そうでございますな。」

ロロタタ「なになに?どうなるっていうのさ?」

そのとたん、敵キャラバンの直上の空が割れて、エニグマが禍々しい姿を現した。

ポルカ「まあ、当然そうなるでございましょうなあ。」

エニグマから、ダークエルフのキャラバンめがけて、まっすぐカニ魔獣が降ってきた。
次の瞬間、ミグノノたちのところまで、敵キャラバンがカニ魔獣に潰されるグシャッという音が聞こえてきた。

ポルカ「大変貴重なキャラバンが、このようなことで失われてしまうとは、まことに悲しいことでございますなあ...。」

カニ魔獣は、そのままダークエルフの歩兵の隊列に襲い掛かり、激しい戦闘が始まった。

ポルカ「まさに”神罰”といったところでございますな。」

おじいちゃん兵「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

突然おじいちゃんが、気合の入った叫び声を上げた。

ロロタタ「なになに?おじいちゃん、急にどうしたの?」

おじいちゃんは、スタスタとミグノノの前に進み出ると、持っていたポムムの枝の杖で、地面をちょこんとつついた。
そのとたん、大地に亀裂が走り、その亀裂は、ダークエルフの歩兵隊の方向に向かってまっすぐ伸びていった。

ミャル「あらら~、ダークエルフが亀裂の中にいっぱい落ちちゃったよ~。おじいちゃん、やるねえ~!」

ミグノノ「もしかして兵士の力が戻ったの?なんで??」

ミサクラ「敵キャラバンが破壊されたので、溜め込んでいたスフィラが放出されて、このあたりのスフィラ濃度が高くなっているのです。それで兵士が本来の力を取り戻したのでしょう。」

ミグノノ「これならいけるよ!よし!全員で突撃して、マググラさん達を助けよう!」

兵士たちは、分身して30人が150人近くまで増えた。
ミグノノは彼らを率いて、歩兵隊の側面に向かって突撃して行った。

特筆すべきは”聖騎兵隊”のシバイヌ(?)だった。シバイヌは分身を繰り返し、3匹が100匹近くに増えていた。
100匹のシバイヌたちは、ダークエルフのナノコーン騎兵隊に襲い掛かると、手あたり次第に大好物のナノコーンをモリモリと食べはじめた。

突然のカニ魔獣と精鋭部隊モ・フリタスの襲撃により、ダークエルフ達は混乱し、隊列が乱れてきた。
この機を捉え、マルポポの正面を守っていたマググラも、戦楽隊をダークエルフの歩兵隊に向けて突撃させた。
戦場に戦楽隊が奏でる勇壮なシンフォニーが響き渡った。

(つづく)

写真:不安な表情で、ダークエルフの大軍を眺めるロロタタ。

島津豊久

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