黒花の旅日誌

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WORLD TRIP 2


夜の木々の間を虚ろなもやが蠢いている。
恐らくゴーストだろう。
僕は闇に目を凝らした。
こちらから近づかなければ、なにもしてこないだろう。
周囲を警戒しながら、焚き火に目を落とす。

昼と夜では、出会うビーストの様相は一変する。ラットルやカマキリといった見慣れたビーストは夜になるとどこかへ隠れ、変わりにゴーストやゾンビといった不浄なビースト達が徘徊するようになる。

もう一度夜の闇に目を凝らす。
不気味なもやは、少し離れていったようだ。

一体、ゴーストやゾンビは、どこからやってくるのだろうか。道半ばで倒れた冒険者の成れの果てか、あるいは、どこか別の世界からやってくるのだろうか。

焚き火に木の枝を投げ入れる。パチパチと火花が飛び、煙は黒い空へ吸い込まれていく。

あと数日も歩けば、ヴァルメルに辿り着けるだろう。
子供の頃、両親に連れられて一度だけ行ったことがある。石畳が鳴らす靴の音が楽しく、賑やかな人の群れはお祭りのようだった。

結局あれが、両親と出掛けた最後の旅行だった。父親も母親も、もうどちらもいなくなってしまった。

もしかしたら、あのゴーストのなかに、父親や母親がいるのだろうか?

頭を降って不吉な空想を追い払った。ばかな。そんなわけがあるはずがないじゃないか。

もう寝てしまおう。夜の闇に侵された想像は、ゴーストのように妖しく、寄る辺ない。

毛布をひろげ、体を横たえた。
父親の温かい手のぬくもり。母親の優しい笑顔。
できるだけ楽しかった頃を思い出しながら、僕は眠りに落ちた。



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