vinciの旅日誌

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ピック様3



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↑前回


目の前にいるピック様が本物かどうかは分からないが、 私はIDの無いユーザーを見た事がない。
それはギルメンも同じようで
「vinciさん!!これ本物じゃない!?ID無いなんて異様だよ!!本物だよ!!」
とスカイプの向こう側で高揚している。
私も、 頭の中で「本物?運営?バグ?」といくつか考えてみたがどうしても『本物』と思ってしまう。それが、 ☆5武器が欲しい故か異様な存在を見つけた達成感なのか、 ピック様によるプレッシャーからなのかは今でも私には分からない。

ギルメンとお互いに気持ちを落ち着け合い、 これからどうするかを話し合った。彼は無論☆5武器をお願いする気らしい。私も最後まで悩んではいたがデュエルの勝率を上げたい欲求には逆らえず背中にゾワゾワとした何かを感じながらもお願いをする事にした。

ピック様へささやきのチャットウィンドウを開き、 文字を打ち込んでいく。
まだ恐怖心が抜けない私は、 一文字一文字打つ度に魂が薄くなっていくような、 背中の表面を後ろに引っ張られるような錯覚を感じていた。
ギルメンはといえば
「あとはガチャ引くだけですね!!」
とアッケラカンとしている。
彼の明るさから正気に戻ってきた私も文字を打ち終えた。
私たちはピック様の前からネロへと帰還した。

ネロへと帰還した私たちはギルチャで、 ピック様を見つけた事  ピック様にはIDが無かった事  マーカーが緑だった事を報告した。
時間が悪かった事もあって、報告はイタイ独り言のようになってしまったが…
ギルメンと2人でスカイプを繋ぎながら、 私はアルメピックアップ  彼はアッザリアピックアップのアイコンをタップする。
あとは、 3000魔石を支払うだけだ。
普段ならば、 当たろうが外れようが3000個の魔石を失うだけで済む。
だが今回は違う。当たった時点で、『当たった事を人に教えてはいけない』という制約がついてしまう。
これを守れなければ呪いを受けるという代償も課されてしまう。
戸惑いながらもギルメンと共に「せーの」の声で10連のボタンをタップする。
1…2…3…4…5…6…7…8…と宝箱を数えて9個目の宝箱を開けるとき
「やったー!!アッザリアきたー!!お!!両手ツモった!!」とスカイプの向こうから歓喜の声があがった。
その時、 スカイプにノイズが入った気がしたがソレは私の勘違いだったかもしれない。
「おめでとうございます!!でも、 当たった事言っちゃって大丈夫ですか!?」
そう。彼は歓喜のあまり無意識か敢えてなのか、 私に伝えてしまった。教えてしまった。 ピック様に願いが通じた事を。
「あ〜。vinciさんマジでビビってるのかぁ。大丈夫大丈夫!!呪いなんてあるわけないじゃん!! vinciさんはアルメ引けた!?」
「いやぁ、 私は…呪いも何も無いみたいですね。爆死です…」
「ドンマイ!! さて、 一先ずやる事やったし解散にしようか。さすがに疲れちゃったよ。」
ギルメンの言葉を承諾して私たちは解散した。 
私も心身ともに疲れがきていた為、 
食事や入浴も構わずにそのまま泥のように眠った。

その日夢を見た。
黒い。いや、 薄暗く赤黒い空間に座っている。特に何もなく、 ただただ座っている。
…ピチ
少し離れたところで何か聞こえる。
…ジュル…ピチャ…クチャクチャ
耳が慣れてきて音がハッキリと聞こえてくる。
…ブチッ…クチャクチャ…ジュル…チュパチュパ…ガリ…チュパチュパ
音の元を耳で探すうちに眼も少しずつだが慣れてきた。耳も眼も凝らして音の元を探す。
…アッ…ブチ…ウッ……チュパチュパ…
音の中に混じって霞のような、 か細い声が聞こえる。音がしている方を眉間にシワを寄せてジッと目を凝らす。 何かが見える。
目を凝らしている間も
チュパチュパ…チュパチュパ…チュパチュパ…
と音はやまない。
眉間が痛くなるくらいにソノ何かを見る。人がいるようだ。薄っすら顔も見えるが知らない人。だと思う。
彼の後ろにも誰かいるようだが彼が影になっているせいか輪郭しか見えない。
何か見てはいけないような気がしたので、 音とは逆の方を見る。その間も音と霞のような声は続いていた。

ハッと起き上がる。よく分からない夢を見たせいか寝汗がすごい。別段怖い夢でもなかったが、 鼓動が頭にも響くかのようだった。
夢と自分の体に混乱していると、 背中に誰かの視線を感じる。後ろを振り返っても誰もいない。 
「頭が混乱しているせいで神経が過敏になっているんだ、 寝ぼけているんだ」と自分に言い聞かせ、 構わずにいた食事と入浴を済ませる。  キャラストにログインをしようかとも思ったが罪悪感からかギルチャを見たくなかったのでそのまま寝直した。


それから5日後。いつも通りにデイリーをこなしつつマスターとして、 ギルメンのログインをチェックする。
先日、 一緒にピック様を探したギルメンが5日前から全くログインしていない。背中に嫌なものを感じつつギルドのルールの為、 彼にメールを送ってから一旦除名とした。 

ギルド管理のページを閉じ、 倉庫を開く。武器を1つ選び売却ボタンを押す。5日前から続く視線が消える事を願いながら……

私がpickの和約を知ったのはそれからしばらくしてからだった。






vinci

コメント

1

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ロギ

ID: 3ignh648udn4

ぞぞぞぞ(」°ロ°)」

2

イアルの冒険者

ジャコ|ω`)

ID: t79hpfqgv3gj

( ゚Д゚)!!!!!!

3

イアルのブロガー

catnap

ID: k6ccys9eu5wk

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

4

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vinci

ID: 42tbevsj6big

>> 1
(・ω≦) テヘペロ

5

1000いいね達成

vinci

ID: 42tbevsj6big

>> 2
(。・ ω<)ゞてへぺろ

6

1000いいね達成

vinci

ID: 42tbevsj6big

>> 3
(>∽¢)テヘペロ

7

ぷりん

ID: 965v5ihkg4ez

こ、怖いよー!
ぴちやぴちゃ言ってたのは何?
想像したら眠れなくなりそうです。
……納豆マヨ丼だよね、きっとそう!(爆

8

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vinci

ID: 42tbevsj6big

>> 7
そうだよ!きっと納豆マヨ丼だよ!
…ピチャピチャ

9

ぷりん

ID: 965v5ihkg4ez

>> 8
途中までは普通のお話っぽかったのに、最後畳み掛けるように怖くなるんだもの。
得体の知れない恐怖の存在…
まるでクトゥルー神話の物語の様な怖さを感じました。
>_<

10

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vinci

ID: 42tbevsj6big

>> 9
クトゥルフ神話まだ読んでないから何とも言えないんだけど、 俺的には得体の知れない物だからこそ魅力を感じちゃうんだよねー。
得体が知れちゃうと仲良くなるか倒すかで済んじゃうじゃん?笑