どんだけ続けんだっていうツッコミはわかってるから言わないで。
大丈夫、これで終わる。
マルバスとバストラルの妄想小話その3です。
例によって例のごとく、二次創作的な妄想と捏造がお嫌いな方にはお勧めしません。
バストラルとマルバスのストーリーイベント及びイアルの歴史を踏まえてはあります。
その1
https://masters.caravan-stories.com/posts/somqsrjy
その2
https://masters.caravan-stories.com/posts/dpsljsfw
過去のお話は上記参照。
※ヒューマンアヴァターの名称は「アデル」で
ドワーフアヴァターの名称は「ルカ」で統一してあります。
――――――
「最近、何だかマルバスの元気がないわね」
唐突に、フォルクにとっては本当に唐突にレーナがそんな事を言いだした。
それにアデルも頷いている所をみると、そうなのだろうかと考え込む。
キャラバンで一緒に旅をするようになって、色々な土地を回って、ヒューマン領だけでなくエルフ領やドワーフ領、果てはオーク領までもめぐる壮大な旅になってきている中、フォルクの目には相変わらず、何処へ行ってもマルバスは女性を口説いている、という印象以外余りない。
「アデルもそう思うわよね。やっぱりお父さんと上手く行ってないのかしら?」
「……お父さん?」
レーナの言葉にフォルクは首を横に倒した。
「レーナ、マルバスのお父さんって誰ですか?」
「何を言ってるのフォルク。マルバスのお父さんって言ったらバストラルしかいないじゃない」
「……」
きょとんと、フォルクは目を丸くした。
ドワーフであるバストラルがマルバスのお父さん。
頭の中で反芻して、それからフォルクは
「ええ~~!?」
叫んだ。
「え?バストラルがマルバスのお父さんって……ええ!?」
「……何を、そんなに驚いてるの?」
「驚きますよ!だってバストラルはマルバスのお師匠さんで……」
「お師匠様でも育ててくれたんだからお父さんでしょう」
フォルクは軽く頭を掻き、それから息を吐いた。
「……まぁ良いです。お父さん云々というのは納得しておきます。それで、上手く行ってないとはどういう事なんですか?」
「どういう事、って言われてもね、ねぇ?」
レーナがアデルにそう言うと、アデルは頷いた後にじっとレーナを見た。
「……ううん、聞いてみたけど、上手くはぐらかされたって言うか。マルバスも話したくないみたいで」
「……」
「そうだよね、アデルも心配だもんね」
「……前から思ってたんですが、何でそれで会話が成立するんですか?」
ほぼ一方的に話しているようにしか見えないフォルクがそう言うと、レーナとアデルにほぼ同時に睨まれた。
「……すみません。なんでもないです」
「まぁとにかく、何とかしてあげられるなら何とかしてあげたいけど、原因がわからないのよね」
レーナの一言にアデルが頷き、それからぱんと一つ手を叩いた。
「どうしたの、アデル?」
アデルは笑みを浮かべ、それからぽんとフォルクの肩を叩いた。
「え?」
それからじっと、フォルクの目を見た。
「え?」
「……フォルクに聞いてきてもらうの?」
レーナがそう問いかけるとアデルはこくりと首を縦に振った。
「えぇ!!何で僕が!!」
「そうよね、同じ男同士なら話が弾むかもしれないものね」
「いやいやいや、マルバスと話が弾んだ事なんてただの一度も……」
ないという前に、アデルがにっこりと笑みを浮かべてもう一度フォルクの肩をポンと叩いた。
「……わかりましたよ、ただし期待とかしないでくださいよ!聞き出せなかったりしても文句言わないでくださいね!」
そう念を押してから、フォルクは盛大にため息を付きながらキャラバンから外に出た。
「ちゃんと聞けるかしらねー?」
呑気にそう言ってから、アデルとレーナはフォルクが戻って来るまで待つ間、お茶でもしようと準備に取り掛かった。
・・・・・・
「はぁ」
足が重い。
フォルクはそう思いながら歩みを進めていた。
まともにマルバスと話らしい話なんかした事がない。というかマルバスが塩対応過ぎて会話にならないのが現状だ。
そんな状態で、何をどう聞けば良いというのだろうか。
そう思いながら顔を上げると、マルバスが弓の鍛錬をしている所に出くわした。
だいぶ距離のある木の枝に的を吊るして、離れた所から矢を放つ。寸分狂わずまっすぐに放たれた矢は的の中心に突き刺さった。
「……」
「……」
暫くその様子を眺めていると、マルバスが弓を引く手を止めた。
「どうせなら、女の子に見て貰ってた方が、ボクのやる気も出るってもんなんだけどな」
「……それは、すみません」
「何か用?こう見えて忙しいんだけど」
そう言ってマルバスは弓を引いた。
矢は先程と同じように中心を射貫く。
「えぇと、最近アナタの元気がないとレーナとアデルが心配してまして」
「それで?」
フォルクの方を見ようともしないマルバスの視線は的に向けられている。
仕方がないのでフォルクもマルバスが視線を向ける的を見ていた。
「話を聞いてこい、と言われたんですけど」
「ふーん」
マルバスの撃つ矢は、変わらず中心へと飛んでいく。
それを凄いなと感心しつつ、フォルクは口を開いた。
「……バストラルと、何かあったんですか?」
フォルクがそう聞いた後に放たれた矢は、的を外れ地面へと突き刺さった。
「……あれ?」
「……」
マルバスは地面へと突き刺さった矢を見た。
それから不機嫌そうにその視線をフォルクへと向ける。
「フォルクの所為だ」
「……えぇ~、何でですか……」
「何ででも」
マルバスはそう言ってからふとフォルクから顔を背け、それからその顔をほんの少しだけ罰が悪そうに歪めたかと思うと、ふいっと背を向けそのままどこかへと行ってしまった。
「えぇ~~??」
一体なんだというのだろうか。
そう思っていると
「あ、フォルクー」
背後から声を掛けられそちらに目を向けるとキャナルとカール、それにバストラルが揃ってやって来た。
「聞いて聞いてー、ペンギンいっぱい捕まえたんだよー」
「それはおめでとうございます」
「捕まえたのはキャナルじゃなくてルカだけどね」
嬉しそうに話すキャナルを横目にカールが訂正をいれてキャナルはぷくりと頬を膨らませた。バストラルはというと先程までマルバスが弓の鍛錬を行っていた的をじっと見上げ、その後地面に突き刺さっている矢に目を向けていた。
「それよりも、ルカの後追わなくて良いの?ペンギン進化する所みたいって言ってたじゃない」
「そうだったー!じゃぁフォルクまったねー」
「はい、また」
キャナルとカールは揃ってパタパタとキャラバンの方へと走っていた。それを目で追ってから、フォルクは視線をバストラルへと向ける。
バストラルはまだ、地面に落ちた矢をじっと見ていた。
「……えっと」
「……外したのか?」
フォルクに視線を向けることなく、バストラルがそう言った。
「……はい」
「……そうか」
「あ、でもですね、それは僕が話しかけた所為でマルバスの集中力が削がれたというかなんというか」
一息にそこまで言ってから、フォルクは何で必死になって弁解しているんだろうかとか思って黙り込んだ。
「……」
「……」
互いに無言で微妙な空気になってしまった。とフォルクは思った。こんなことになるなら先程キャナル達と一緒にキャラバンへ戻れば良かったと小さく後悔をし出し、どうやって自然にこの場から離れられるかを考え始めた頃だった。
「……マルバスとは長いのか?」
ふと、バストラルがそんな事を聞いてきた。
「え、はい。そうですね、僕らがキャラバンで旅に出始めた頃に出会ったので、長いと言えば長いです」
そう答えるとバストラルはようやく地面に刺さった矢から視線を外し、フォルクを見上げた。
「お前たちの目に、マルバスはどう映る?」
「どうって……」
「……」
無言で見上げてくるバストラルに、若干の威圧感を感じる。
フォルクはそう思いながらも軽く頬を掻いた。
「ええと、あんな性格ではありますけど、頼りになりますし信頼していますよ」
「……信頼、か」
「はい、仲間ですから」
フォルクがそう言うと、バストラルは視線をフォルクから地面の矢に戻した。
「仲間か」
ぽつりと呟き、もう一度フォルクを見上げた。
「一つ、言っておかねばならぬ事がある」
「はい?」
「いずれ、何かあった時にマルバスを責めるな」
「え……それはいったい……」
どういう意味だと問い掛ける前に、バストラルはキャラバンの方へと歩いて行ってしまった。
「えぇ~~??」
何だか、余計に気になる事が増えたみたいだ。
フォルクはそう思いながら、レーナとアデルにどう説明するか考え始めた。
――――――
「……」
「……」
レーナとアデルに先程の事を報告したフォルクは、伺うように二人の顔を見た。
レーナは変わらず心配そうな表情で、申し訳ないがアデルが何を考えているのかは表情から読み取ることが出来なかった。
「でもバストラルの言う『マルバスを責めるな』ってどういう事かしら?」
「すみません、そこまでは……」
フォルクがそう言うと、アデルはじっとフォルクを見た。
「……だから、期待はするなと」
「そうじゃないわよ、フォルク。アデルは少しでもマルバスとバストラルの事が分かったからフォルクに感謝してるのよ」
コクコクとアデルは頷き、分かり難いとフォルクは口に出さずに思う。
「せめて、マルバスとバストラルの間に何があったかだけでもわかれば……」
「そんな事知って、どうするの?」
「きゃぁ」
「うわぁ」
突然に聞こえたマルバスの声に、レーナとフォルクは飛び上がるほど驚いて恐る恐るそちらを向いた。そこに思った通りマルバスがいて、その表情は呆れているようでもあった。
「そんなに驚かなくても良いのに」
「だ、だっていきなりマルバスが声を掛けてくるから……」
「黙って聞いてようかと思ったけど、流石にちょっと聞き逃せなかったからね」
そう言って、マルバスは一度息を吐いた。
「だったら、何があったのか聞かせてくれる?」
「それは出来ない」
すっぱりと、レーナの提案をマルバスは首を左右に振って断った。
それにレーナはぷくりと頬を膨らませた。
「どうして?私たち凄く心配してるのに!」
「レーナちゃんとアデルちゃんが心配してくれるのは嬉しいんだけど。これはボクとバストラルの問題だからさ」
「僕も心配してるんですけどね」
ぼそりとフォルクが呟いてみたものの、マルバスは当然の様にそれを聞き流した。
「出来る事があるなら、お手伝いしたいのに」
「残念だけど、レーナちゃんとアデルちゃん達に出来る事はないよ。気持ちだけありがたく受け取っておくから」
そこまで言って、マルバスは一度区切りレーナとアデルを見た。
「何かあっても、その時にバストラルを責めないでね」
「え?」
レーナとアデルが揃って首を倒すと、マルバスはほんの少しだけ悲しそうな笑みをその口元に浮かべるとキャラバンから出て行った。
「……相変わらず、僕には何もなかったんですが」
ぼそりとフォルクがそう愚痴たけどもレーナとアデルは聞いていなかった。
――――――
キャラバンから外へでたマルバスは一度小さく息を吐いた。
もっと上手く取り繕わないと、気づかれてしまうだろうか。
そう、思った所で背筋がぞくりとした。
自分の心臓の音がドクンと大きく脈打つ感覚、マルバスは小さく息を飲む。
――殺気。
一体どこから、とマルバスは視線だけでそれを探る。
その間も、心臓の高鳴りはやむ事なく寧ろ増している。
「……」
そっと、矢筒に手を伸ばした所で、ふっと感じていた殺気が消えた。
それにマルバスは呆れた様な息を吐いた。
「……どういうつもりだい、バストラル」
「試しただけだ」
キャラバンの屋根の上から、バストラルはひらりと飛び降りた。
「勘が鈍っていないか、試させてもらった」
「……それで?」
「合格だ」
満足そうにバストラルは頷き、マルバスは不服そうに口を結ぶ。
そんなマルバスを見上げ、バストラルは視線をキャラバンへと向けた。
「……随分と、信頼されていうようだな」
「まぁ、付き合いは長いから」
「そうか」
バストラルはもう一度マルバスを見上げた。
「鷹の子はいずれ親を超える」
「……」
「今のお前は、俺を殺せるか?」
バストラルの問いに、マルバスは首を左右に振った。
「子は何時までも子のままだよ。親を殺せるわけがない」
「……」
「ボクがバストラルを殺さなきゃならない、理由がない」
「理由はある。お前が鷹の子だからだ」
「そんなの理由にならないよ!!」
拳を握りしめて、マルバスは悲痛な声を出した。
「……父さんは、孤児だったボクを拾って育ててくれた。弓の扱い方を、矢の作り方を、生きる為の方法を教えてくれた。ボクにとってバストラルは父さんで師匠で恩人だ。そんな人を殺すなんて、ボクにはできない!」
「……そうか」
バストラルはそう言って、弓矢を構えた。
その瞬間と矢の先端は、マルバスへと向いている。
「……子は所詮、子か……」
バストラルの呟きが終わると同時に矢は放たれた。
ヒュンと短い音を立て、マルバスの頬のすぐ横をすり抜けた。
「え?」
『キャゥゥン』
短いマルバスの呟きと悲鳴に似た鳴き声が重なった。マルバスがそちらに視線を向けると、狼が一匹、口から血を流して倒れていた。
「……」
「失格だ。狼の気配すら読めぬ今のお前には、俺を殺せない」
バストラルはそう言って、じっとマルバスを見上げた。
「一から出直して来い。キャラバンでの旅が終わるまで待ってやる」
「……」
マルバスは一瞬何を言われているのかわからないようで、目を丸くしていた。それからバストラルのいう意味を理解したのか、その顔に笑みを浮かべた。
「ありがとう、バストラル」
「勘違いするな、何も変わってない。ただそれまでの期間が延びただけだ」
「それでも、良いよ。その間にボクはもっと強くなる。父さんと一緒に生きていける位には」
バストラルは嬉しそうなマルバスから視線を逸らし、見えないのを良い事にほんの僅かだけその表情を緩めた。
ーーーーーー
はい、というわけで自己満足なマルバスとバストラルのお話はこれで終了でございます。
最後までお付き合いありがとうございました。
親子親子してるマルバスとバストラルが見たいので
あとは公式のクロスストーリーを本当に待とうと思います。
バストラルパパンの☆5開放も
出来れば早めにお願いします(笑)
全力でアニマと宝珠集めて待ってます!!
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