伽那樹の旅日誌

公開

【妄想】マルバスとバストラル【小話】


※バストラルのストーリーイベントのネタバレを含む妄想小話です。
まだクリアしていない方と二次創作的な妄想と捏造がお嫌いな方は
読むことをお勧めしません。

なお、読んだ後での苦情は受け付けません。

バストラルイベントでのマルバスとの絡みが薄かったので
むしゃくしゃしてやった、後悔はしていない。

――――――

オーク兵から受けた傷の処置も終わり、バストラルはキャラバン内で様子を見る事になった。まだ、意識は戻ってない。

「ふぅ……」

マルバスは小さく息を吐いた。手に持っているのは、使い古されたバストラルの弓だ。ところどころ補強をしながら使っていたのだろうか。
よくもまぁこんな物で、と思いながらも今までこれがバストラルが戦い続けいた証拠だと思うと、何だか胸が苦しい。

「マルバス」

呼ばれて振り向くと、レーナが心配そうな表情をしていた。

「大丈夫?」
「大丈夫だよ、意識が戻ればなんの問題もないって……」
「そうじゃなくって」

レーナはじっとマルバスを見上げた。

「マルバスが大丈夫かって聞いてるの」
「……」
「お父さん、なんでしょう?今日は色々あったし、精神的にも疲れてるんじゃないかって」
「レーナちゃんは優しいねぇ」

にっこりと笑みを浮かべて、マルバスがそう返すとレーナはぷくりと頬を拭くらませた。

「もう、そうやってすぐ軽口叩くんだから」
「ボクは大丈夫だよ。でも、心配してくれてありがとう」
「どういたしまして。マルバスもちゃんと休むんだよ」
「うん」

本当にだからね、と念を押してレーナはキャラバンの二階へと昇って行った。
それを見届けてからマルバスはベッドの上で眠るバストラルの様子を見た。苦しんでいる訳でも魘されている訳でもない。

「父さん……」

静かに寝息を立てるバストラルにマルバスはそっと手を伸ばしてから、その手を下ろした。

・・・・・・

木を削る音がする。規則的な音は何処か懐かしい。
バストラルはゆっくりと目を開けた。見覚えのない天井。起き上がるほどの体力はないから、首だけを音のする方へと向けた。

「……」

淡く静かに灯るランプの中で、マルバスが木を削っていた。
幼いころは危なっかしい手付きでナイフを握っていたものだが、暫く見ないうちに随分と上達したなと思いバストラルはまた目を閉じた。


・・・・・・

「バストラルも目を覚まして、仲間になって万々歳だねぇ」

キャナルとカールがバストラルを囲んで話をしていた。

「そうだ、これ渡してくれって頼まれたんだった」

そう言って、カールは真新しい弓をバストラルに差し出した。

「……これは?」
「えぇとね、お店に行ったらたまたま売ってたから買ってきた!……でいいんだっけ?」

くりりんと、キャナルは首を横に倒し、カールは頭を抱えた。

「あぁーもう、なんでそこで聞いちゃうんだよぉ」
「だってぇー」
「……」

バストラルは手に持った弓を見た。
長く使い込んだ訳でもないのに手に馴染む。

「試しに、射ってみても良いか?」
「良いけど、アタシたちは狙わないでよー」
「わかっている」

バストラルは弓を構え、矢を引き放った。
ブレずにまっすぐと飛んでいく矢を見て、バストラルは小さく頷いた。

「悪くない」

その一言にカールとキャナルは笑みを浮かべ、互いにパチンと手を合わせて打った。

「使わせて貰う。それから、腕を上げたなとマルバスに伝えておいてくれ」

そう言って、バストラルはふらりと姿を消した。

「ありゃりゃ、バレてたねぇー」
「キャナルがちゃんとやらないからだろう」
「そんな事言ったってさー、とにかくマルバスに伝えに行こうよー」
「そうだね」

タタタとキャナルが走り出し、その後をカールが追いかけた。

「マールーバースー」

キャラバンの中を覗くと、机の上で突っ伏して眠るマルバスに、レーナが肌掛けを掛けてやっている所だった。

「ありゃ、寝てるの?」
「うん、結局昨夜は一睡もしないで弓を仕上げてたみたい」
「そっかー、じゃぁ後での方が良いかな?」
「マルバスに用事?」

首を倒してレーナが聞くと、キャナルはふるふると首を左右に振った。

「さっき、頼まれてた弓をバストラルに渡したんだ」
「それで、バストラルが『腕を上げたな』って褒めてたよーって」

それにレーナは小さく口元に笑みを浮かべた。

「そっか、喜んでくれたんだね、マルバスのお父さん」
『うん』

カールとキャナルが揃って首を縦に振った。

「じゃぁ起きたら伝えてあげないとね」
「ねー、じゃぁカール、マルバスが起きるまでちょっと向こうに行ってようよ」
「そうだね」

キャナルとカールはパタパタと走ってキャラバンから出て行った。

「……」

レーナはぽんぽんとマルバスの肩を叩いた。

「だってさ」
「……」

むくりと起き上がたマルバスは、何とも言えないような表情をしていてそれから口元を手で押さえて、俯いてしまった。
僅かに髪の隙間から見える耳が赤い所をみると、直接ではないにしてもバストラルに褒められたのが嬉しかったのだろう。

「貴方が起きたってわかったら、あの子達また伝えに来るわよ」
「……それまでには、なんとかするよ」

そう言ったマルバスはほんの少しだけ、不満そうにレーナを見た。

「ボク、今すごくかっこ悪くない?」
「そんな事ないわよ。何時もよりカッコいいかも」
「……それは、ちょっと複雑だな」

そう言って、マルバスとレーナは笑みを浮かべた。




―終わり―



バストラルイベントでのマルバスとの絡みが薄かったので
むしゃくしゃしてやった、後悔はしていない(二回目)

なんかもうちょっとあっても良かったんじゃないかと。
だって久しぶりの再会だよ?

せめて会話をさせてやれ!
マルバスさんの一方通行感がなんか寂しかった。

いずれ公式でマルバスとバストラルがちゃんと親子してるとこみたいです、はい。




伽那樹

コメント

1

禍鬼

ID: a3jeggkpwzkt

良いですね…!( ´∀`*)こういうの大好き!
有難う御座います!

2

マーシャ

ID: 9kr5taxu85hn

楽しんで読ませていただきました!(o´罒`o)
♪ o(≧▽≦)o ♪ありがとッ

3

イアルの冒険者

よね

ID: avdsrs5j2iyq

このマルバス最高です(//∇//)
ありがとうございます!!!

4

イチカ

ID: gzjknj3tdnkw

素敵なマルバスとバストラルのお話ありがとうございます!
とてもほっこりしました!(*´꒳`*)

5

イアルの冒険者

伽那樹

ID: 9i9jpemju9aj

読んでいただいただけでなく感想まで……
皆様、ありがとうございます(*ノωノ)