島津豊久の旅日誌

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Episode 28「キレイなソフィア後編(偽)」

~これまでのあらすじ~

キャラバン一行の前に突如現れたソフィア(偽)。
悪党のアーティストが造った偽者であるにもかかわらず、彼女に敵意は無く、華麗で凛々しく、そつなく家事もこなせる完璧な騎士だった。
たちまち彼女はキャラバンの(主に)女性陣の間で人気者になり、今や”キレイなソフィア”と呼ばれるようになった。
一方、”普通のソフィア”と不名誉な名前で呼ばれるようになった本物のソフィアは、一人やさぐれていた。

Cross Story (偽)

普通のソフィア「ブツブツ。…全く。騎士の役割はパーティを護ることであって、剣の腕が重要なのだ。料理などできなくても、私は全然気にしないぞ。」

スミロフ「まあ、なんだな。気分が落ち込んだ時にゃあ、酒に限るぜ。ほれほれ、飲め飲め。」

普通のソフィア「気遣い、感謝する…って、酒樽が空じゃないか。フッ、全く。」

スミロフ「ウィー?。まあ、あんま気にすんなや。おめぇさんには、おめぇさんの強みがあんだろ?それを前面に出してきゃいいのよ。」

普通のソフィア「そうだな。その通りだ。…って、もう寝てるし。おい!スミロフ!風邪ひくぞ。」

その時、キャラバンが大きく揺れてポルカが敵襲の警報を出した。
ソフィアは愛用の剣と盾を掴むと、颯爽と飛び出していった。

ところが、

ザラ「キレイなソフィアさん、すごーい!ヒドラを一発で倒しちゃうなんて!」

ソフィア(偽)「いやいや、キミ達の的確なサポートがあればこそだよ。」

レーナ「本当にすごい!魔法を唱えるひますら無かったわ。」

アメリア「私、キレイなソフィアさんに教わったチーズを使って、新作のパンを焼いてみたんです。体力回復に効きますよ。」

ソフィア(偽)「ありがとう、アメリア。…キミの焼いたパンを食べると生き返った気がするよ。」

普通のソフィア「…。」

普通のソフィアがあっけにとられていると、少し離れた場所に、突然ウニ魔獣が出現した。

アデル「?!おかしい!全く予兆が無かったわ。こんなのはじめて。」

アーティスト「クックックッ。お久しぶりですね、キャラバンの諸君。今日は私が造った、このウニ魔獣(偽)の実験台になってもらうよ。」

普通のソフィア「おのれ!出たなアーティストめ!今日こそ叩っ斬ってやる!」

ソフィア(偽)「あれが、…アーティスト。…ボクの創造主か。」

アーティスト「おやおや。…あなたは私の失敗作ではないか。ちょっと目を離した隙に逃げ出して、よもやキャラバンに味方するとは、何という親不幸者だろう。さあ、ウニ魔獣(偽)!あのできそこないともども、やっておしまいなさい!」

ウニ魔獣(偽)はやたら強かった。無数の棘を飛ばしてきて、全く近づけなかった。
普通のソフィアとキレイなソフィアは、横に並んで盾で棘攻撃を防ぎ続けた。

普通のソフィア「くそっ!何てパワーだ。このままでは盾がもたんぞ。」

ふと隣を見ると、キレイなソフィアは聖盾ヴォルティスを使っていた。全く、自分のは女剣士の盾なのにな、と思った。
そのとたん、棘の一撃で普通のソフィアは盾をはじき飛ばされてしまった。

普通のソフィア「しまった!」

普通のソフィアは、2本の棘が自分めがけてまっすぐ飛んでくるのを見た。
やられる!と思って目を閉じた瞬間、誰かに突き飛ばされた。

普通のソフィアが目を開けると、キレイなソフィアの背中に魔獣の棘が突き刺さっているのが見えた。

普通のソフィア「おのれ!」

普通のソフィアはこの後のことをよく覚えていない。
飛んでくる棘を気にかけること無く、まっすぐウニ魔獣(偽)めがけて突っ込むと、ところ構わずむちゃくちゃに斬りつけた。
普通のソフィアの攻撃で、一瞬、ウニ魔獣(偽)がひるんだ隙に、レーナ、ミンミ、マリオンが連続で魔法を叩き込んで、ようやくウニ魔獣(偽)は動かなくなった。

アーティスト「あああ、口惜しや。このウニ魔獣(偽)を造るのにどれだけ苦労したことか...。」

気付いた時には、アーティストは居なくなっていた。

普通のソフィア「おい!しっかりしろ!」

ソフィア(偽)「…やあ、本物のキミが無事でよかったよ。」

普通のソフィア「わかったから、もうしゃべるな。」

ソフィア(偽)「…ボクが生まれてきたのは、きっと今日、この時の為だったんだよ。キミを護ることができて、本当によかった。」

普通のソフィアの目から涙が溢れだしてきた。

ソフィア(偽)「イアルは、この世界は本当に美しいな。…そして、これからもキミはこの世界を護る為に戦ってゆける。…ありがとう。偽者のボクに、この世界での役割を与えてくれて。短い間だったけど、キミ達の仲間になれたことをボクは誇りに思うよ。」

キレイなソフィアが静かに目を閉じると、全身が砂になってさらさらと溶け落ちていった。
普通のソフィアは、いつまでも声を上げて泣き続けた。

それから暫くして…、
またまた雨のハワース大森林を進むキャラバン。
ポルカは前方に人影を見つけキャラバンを停止させた。
ポルカ「おや?…あれはソフィア様。どうされましたか?ずぶぬれではありませんか?ささ、早くキャラバンにお乗り下さいませ。」

(つづく)

写真:二代目”キレイなソフィア”(偽者のソフィアを3人集めると、ミサクラの分身ごっこができるようになる。)

島津豊久

コメント

1

老舗人

Cnk

ID: njmwag8xanaj

( ;∀;)イイハナシダナー

楽しく拝読させて頂きありがとうございます(*´▽`*)
しんみりしたかと思いきや、最後も笑ってしまいました。
他にもEpisode がたくさん!!で嬉しいです♪

2

島津豊久

ID: weubkgqkmtdq

ありがとうございました。
ソフィアの星5つクエで(偽)が3人並んで立ってて笑ったのもいい思い出ですw
アーティストにはもっと頑張って(偽)いっぱいつくって貰いたいですw