~これまでのあらすじ~
雨のハワース大森林を進むキャラバン。
ポルカは前方に人影を見つけキャラバンを停止させた。
ポルカ「おや?…あれはソフィア様。どうされましたか?ずぶぬれではありませんか?ささ、早くキャラバンにお乗り下さいませ。」
Cross Story (偽)
ソフィア(偽)「…。」
ソフィア「貴様アアア!また性懲りも無く現れたな!アーティストとかいう奴の造った偽者め!叩っ斬ってやる!」
フォルク「まあまあ、ソフィア。この人暴れる様子は無さそうですし、何をしに来たのか話を聞いてみましょうよ。」
ソフィア(偽)「それが、ボクは気付いたらあの場所に立っていて、それまでの記憶が無いんだ。」
ソフィア「…ボク…だと?」
ソフィア(偽)「ボクは自分でもヒトじゃないってことは自覚してる。でも、あなた方に危害を加えるようなことは絶対にしないと騎士として誓うよ。」
ユウリ「みなさん、この人からは私と同じような気配を感じます。きっと悪い人じゃないと思います。」
アデル「それってつまり、精霊のような存在ってこと?」
ユウリ「わかりません。でも、それに近い何かであることは間違いないと思います。」
キャラバンから放り出して誰かに迷惑がかかるといけないので、アデルが提案して、キャラバンに置いてしばらく様子を見ることにした。
最初はみんな警戒していたが、害が無いことがわかると次第に仲間として受け入れられたのだった。
ただ一人ソフィアを除いては。
ソフィア(偽)「おはよう、ザラさん。朝食を作っているのかい?」
ザラ「あっ、ソフィア(偽)さん、おはようございます。そうなんですよ。今日はあたしが当番で。」
ソフィア(偽)「ちょっとボクに包丁を貸してごらん。…ほら、こうやって持つと肉が切り易いだろ?」
ザラ「すごーい!ソフィア(偽)さん、プロみたい!」
ソフィア(偽)「ポトフを作っているのかな?…乾燥させたサンショウシメジがあれば細かく砕いて少しだけ入れてごらん。きっと味が引き立つよ。」
ザラ「…ソフィア(偽)さんって、全然本物さんと違うんですね。見た目はそっくりなのに。本物のソフィアさん、この前なんか、あの大剣でまな板ごと野菜を叩き斬っちゃうし、シチューにイチゴジャム入れちゃうし。」
ソフィア(偽)「ハハハ。彼女らしいね。どうやらボクは、全然違う性格に造られてしまったみたいだね。」
ザラ達の様子をマルバスが後ろからそっと見ていた。
マルバス 「(これはまずいぞ。…彼女は僕の最大のライバルになりそうだ!)」
グァラル「よう、マルバス?どうしたんだ、深刻な顔して。」
マルバス「ああ。…いや、何でもないよ。」
マルバスの思ったとおり、ソフィア(偽)は、すぐに主に女性陣の間で大人気になった。
ソフィア(偽)というのは呼びにくいので、誰かが”キレイなソフィア”と呼び始め、
やがてそれがキャラバン全体に広がり定着した。
ベネカ「キレイなソフィア様!今日も剣の稽古にお付き合い下さいね!」
ソフィア(偽)「わかったよ、ベネカ。お手柔らかにね。」
リリ「まあ、キレイなソフィア様、今日もなんてりりしいお姿。まさに騎士の鑑ですわ!」
普通のソフィア「ぐぬぬぬ!」
バキバキバキ
フォルク「うわああ、普通のソフィア!保管庫のノブが捻じ切れてますよ!力入れすぎですってば!」
普通のソフィア「貴様アアアアア!私の名前に”普通”とか付けるのをやめろー!」
(つづく)
写真: キレイじゃないほうの普通のソフィア
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