１．テレビを一切見ないという人は別として、誰でも一度ぐらいは竹原ピストルの歌が流れる某生命保険会社のCMを観たことがあるだろう。その歌詞の一節を引用（著作権法３２条１項）すると、

「よー、そこの若いの、俺の言うことをきいてくれ。俺を含め、だれの言うこともきくなよ」

とある。この歌をきいたときにすぐ思い出されるのが、そう、自己言及のパラドックスである。正確には別物だが、「クレタ人が『クレタ人はみな嘘つきだ』と言った。」というフレーズであまりに有名なこのパラドックスと類似する論理矛盾が生じているのではないか。すなわち、

①「俺を含め、だれの言うこともきくなよ」　→　②言うことをきかないという指示に従う　→　②の時点で①で禁止した「俺」の言うことをきいてしまっている　→　論理矛盾

この一見すると矛盾した歌詞をどう考えるべきか。

２．この歌詞を普通に考えると、若者よ人の意見に左右されず伸び伸びと生きよ！ということが言いたいだけであって、論理がどうとかはどうでもいいのだろう。
　それは十分承知のうえで、無理やり論理矛盾を解消させようとするならば、「俺を含め、だれの言うこともきくなよ」という言葉の前に、言外の意味として、（この発言の後は）という意味を含ませるといいのかもしれない。こうすれば、上記②の行動をとっても①以後とは前提条件が変わってしまっているので、論理矛盾は生じない。
　つまり、上記歌詞にでてくる「俺」は、本当は「誰のいうこともきいちゃだめだよ」という自分の話（アドバイス）をきいてほしいのである。こう考えると、若者にくだをまく寂しがり屋のおっさんの歌ともとれるので可愛くみえてこないだろうか？

３．これはキャラストに限らないのだが、「運営はユーザーの意見をきけ」という発言がある一方で、「運営はユーザーの意見をきくな」という発言も散見される。しかしどこか既視感がないだろうか？

そう、論理矛盾である。


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