あぼがどの旅日誌

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義理チョコ


1.甘い物が好きな人もそうでは無い人も、現代日本で生きている限りなかなか避けては通れないイベントがやってきた。そう、バレンタインデーである。
 昨今、バレンタインデーにチョコを贈る文化を廃止すべきとの主張を耳にする機会も多くなったように感じる。とはいえ、本命チョコは男女の関係性を発展させる良いきっかけになりうるし、親しい人に日頃の感謝を込めて食べ物を贈るということそれ自体は素敵なことなので、殊更に否定的に捉える必要もないのであろう。そういうわけで、もっぱら上記主張のやり玉に挙がるのは本命チョコではなく義理チョコの方である。

2.この日誌を書くに際して改めて「義理」の定義を調べたところ、義理とは物事の正しい筋道・対人関係や社会生活において守るべき道理とあったので、義理チョコを贈るという行為はそもそも人倫にかなう当然の行為なのである……という冗談はさておき、どうやら義理チョコはお歳暮などと同様に人間関係を良好に保つためにやり取りされるものであるらしい。 
 さりとて義理チョコを贈る相手が増えてくると馬鹿にならない金額であるし、誰にあげるかという選定段階から始まり、相手によって差異を設けるべきかや、設けたら設けたでその軽重を誤ると周囲の女性からのやっかみや男性からあらぬ誤解を受けるのではないかといった様々な葛藤がある(らしい)ので、良好な人間関係のためとはいえかかる負担を負いたくないと女性が考えるのも当然のことであろう。
  しかしながら、バレンタインデーの義理チョコ文化はいまだに現代日本に強く根付いており当分廃れる気配もない。それならばいっそ、義理チョコを贈るという行為を自身の経済活動と捉えてみてはどうだろうか。

3.まず前提として、義理チョコを贈るという行為は贈与者が一方的に出捐するものではなく、一か月後のホワイトデーのお返しという見返りが期待できる行為であるという点を押さえておく必要がある。
 このホワイトデーのお返しというのが大変厄介なもので、もう死語になっているのかもしれないが、我が国ではホワイトデー三倍返しなる悪習が古くから存在するのである。投資をかじったことがある人ならピンとくるかもしれないが、義理チョコを贈るという行為は、一か月後にほぼ確実に出資額が三倍になって返ってくるという、バフェットもびっくりの破格の投資行動といえるのである。
 そう考えると、デパートの催事場でチョコを購入するため列をなす女性達が優良銘柄を買い漁るハンターに見えてこないだろうか。
 また、一か月後に3倍という数値は年利に換算すると実に約2600%にもなる。民法が定める法定利率が年利5%(商事利率でも6%)、サラ金の金利等を規制する利息制限法の上限利率でさえ年利20%(程度)を超えたらアウトと考えると、年利約2600%という数字の凄まじさが理解できるであろう。
 一日&女性限定で一か月後に出資額の三倍の見返りが得られる可能性がある投資方法があります……との誘い文句をみたらほとんどの人が100%詐欺だろと鼻で笑ってしまうと思うのだが、かかる投資は実在するのである。

4.ここまで書いてきてふと思い出したが、義理チョコにはいわゆる「あいまい戦略」が用いられているとの指摘を目にしたことがある。つまり、男性に想いを告げるというバレンタインデーの本旨及び男性の遺伝的性質に鑑みれば、せいぜい数百円の義理チョコであっても、義理という意図をほんの少しぼかして笑顔を添えて手渡せば義理チョコがもつ本来の値段以上の効用が産まれるのであって、たとえ義理チョコであってもあからさまに義理とわかる形で渡すのは下策である……というのである。あらぬ誤解を招くリスクがあるような気もするが、大変鋭い考察である。

5.いつものようになにか無理やりキャラストに絡めて書こうと思っていたのだが、バレンタインイベントは来週からとのこと。チョコを一番貰ったキャラに限定衣装が贈られるようだが、ベストジーニスト賞におけるキムタクのように、一部人気キャラは殿堂入りされるのだろうか?個人的には、バレンタイン衣装を何着も持っているのも変な話なように感じるのだが。
 歳を重ねるごとにバレンタインは単に面倒なイベントになっていくものであるが、一時の非日常と割り切って楽しんでいきたいものである。
 あぼがどは、キャラストと義理チョコ文化を応援しています。


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