ここはスコーフェル山、夜更けです。
エルフ正史の書かれた書の隣に、オークの日誌を見つけました。私も、暇つぶしに日誌をつけることにします。

さて、何から始めましょうか。
私の家は、リファルファ地方の片隅、ルヴイラの森の近くにあります。その名の通り聖樹ルヴイラに見守られているこの森は常に穏やかな光に包まれていて、日が沈むころには金色の光たゆたう神々しい景色が見られるのです。
この平和な日常が壊されたのは今日の昼のこと。肌が粟立つ不穏な空気が森に満ち、空が十字に裂けて、落ちてきた黒い怪物は村で唯一のスフィラ貯蔵庫を破壊しました。相対したポロックスとミリアと私には時間稼ぎしかできず、もしルヴイラの助けがなければ命はなかったでしょう。
怪物が消え、生き延びた私たちは貯蔵庫を直す方法を求めてこのキャラバンで旅に出ました。

暇つぶしと書きましたが、なぜ暇かというと、眠れないでいるからです。ポロの傷が、ミリアの悲鳴が、怪物の目が、脳裏に焼き付いて離れない。「遠距離から戦う者は、近距離で戦っている仲間の死を見る可能性がある」という初歩の初歩が全く分かっていなかったと、倒れたポロを見て思い知らされた。
強く、なりたい。
仲間をみんな守れるくらいに。



もうすぐ、朝が来ます。

ハシバミ