タンゴマの旅日誌

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キャラクターとストーリー 最終回「イヤミはひとり風の中」


今回のイベント、賛否両論の賛があまり見受けられない印象です。
「これまで苦労して育ててきたキャラクターが使えない」
「手動でモンスターボールを投げる必要があるため放置狩りができない」
「ポッと出のキャラクターに愛着が湧かない」
などが主な理由でしょうか。

「オーブではなくバトルで十分育成が出来る」
「多少の手間はかかるけどアニマもすぐ集められる」
「ビーストが十二分に配置されており他のプレイヤーと奪い合いにならない」
など、今後にも踏襲してほしい改良点も多いと思うんですけどね。

個人的な不満としては、ゴールドがゴリゴリ減っていくので割引だけではなく戦闘での報酬ゴールドを増やして欲しかったのと、今回のイベントビーストが今回限りの使い捨てにならない事を確約して欲しかったところです。


しかし何より批判の矛先を向けられているのはやはりポケモンのパクリ疑惑ですが、そこに関しては自分は大した問題ではないと思っています。

このシリーズの最初にも述べましたが、これだけコンテンツが溢れているご時世に誰も思い付いた事がないお話やシステムを考えろなんていうのは酷というものです。

どこかで見たようなお話だろうがシステムだろうが、面白ければそれで良いじゃないかというのが個人的な意見です。


そんな今回のテキストは藤子不二雄先生と肩を並べる昭和の天才漫画家、赤塚不二夫先生の「おそ松くん」の一編、「イヤミはひとり風の中」です。

おそ松くんの中に留まらず、赤塚不二夫先生の全作品の中でも最高傑作と言えるのではないかという名作であり、2018年の「おそ松さん」二期でもリメイクされていたので知っている人も多いかもしれません。
自分はおそ松さん版は観ていないので、原作版をベースにお話していきます。


*****

時は江戸時代、とある場所にハラペコ長屋と呼ばれる貧乏長屋があった。
そこに暮らす浪人イヤミは子供の食べているおにぎりを掠め取ろうとするほどの貧乏でありながら働くこともせず、貧乏仲間の長屋の皆にもそのグータラぶりを馬鹿にされていた。

ある日イヤミは盲目の花売りの少女、お菊を見かける。
最初はお菊が目が見えないのを良い事にお釣りをだまし取ろうと画策したイヤミだったが、誰も買ってくれない花を買ってくれた事に感謝する少女を見て自分を恥じる。

イヤミを親切なおじさんだと思ったお菊は自分の天涯孤独の身の上を語り、それを聞いたイヤミは強く生きてほしいとお菊を案じながらもその場では別れる。

その後猛スピードで走る早馬とすれ違ったイヤミは遠く背後で少女の悲鳴を聞き、もしやと思い踵を返して駆け出す。

これまでダラダラと生き、全力を出す事などなかった自分が全力で走っている事に自ら驚くイヤミ。

駆けつけたイヤミが見たものは馬に蹴られて倒れたお菊の姿だった。

声をかけるイヤミに「お花が…お花が…」と泣きながら売り物の花を拾おうとするお菊。
そんなお菊にイヤミは「もう拾わなくていいざんす」と言う。
「えっ」と戸惑うお菊に「ミーといっしょにおいで。ミーも貧乏だけどこれからはミーがついてるざんす」と告げる。
涙を流してイヤミに縋り付くお菊。

イヤミは変わり、朝早くから深夜まで仕事を掛け持ちして働く。
お菊もお手伝いの仕事をしてイヤミを支え、つましいながらも幸せに暮らす二人。

しかし町でお菊を見染めた若殿のチビ太はイヤミからお菊を奪おうと画策し、イヤミは職を失ってまた食うに困るほどの貧乏に戻ってしまう。

そんな折、町医者の先生にお菊の目を見てもらうと、長崎に居る蘭学者の先生ならこの目を治せると言う。
しかしそれには莫大な金が必要であり、もちろんそんなお金もないイヤミは途方に暮れる。

お菊の様子を伺っていた側近からの報告でその事実を知ったチビ太はお菊に援助を申し出るが、チビ太のせいでイヤミが職を失った事を知っているお菊は断固として拒否する。

なんとかお菊の目を治したいと願うイヤミはある日、お菊の目を治せるだけの御用金(公金)がこの町を運ばれていく事を知る。

御用金を運ぶ行列に単身斬り込むが、空腹で力が出ないこともあり返り討ちに遭いそうになるイヤミ。
しかし謎の助っ人が現れて強奪を成し遂げる。

実はこの御用金の運搬は、お菊に拒絶されながらもなんとか目を治してあげたいと思ったチビ太がイヤミに奪わせるために計画したものだったのだ。

イヤミは奪った金とお菊を町医者の先生に託し、2人が旅立ったのを見届けてすぐに捕縛される。

*****

時は経ち、長い牢屋暮らしの後に釈放されたイヤミはすっかり弱り以前にも増してみすぼらしい姿になっていた。

かつての長屋に戻ったイヤミだが、長屋は別の大家の手に渡っており住民も全て入れ替わり、町医者の先生も亡くなった事を知る。

住むところも失い自分を知る者が誰も居なくなった町を去り、ヨロヨロと彷徨うイヤミは峠の茶屋の前を通りかかる。

空腹のあまり子供が落とした団子を拾って口に運ぶイヤミを見て、子供たちは「こじき、こじき」と囃し立て乱暴を働く。
それを「やめなさい!」と一喝して救ってくれた女性の姿を見て驚くイヤミ。
彼女は美しく成長したお菊だったのだ。

「み、見えるんざんすか?」と聞くイヤミにお菊は「変なおじさん。なんでも見えるわ。綺麗なお花も空も鳥も…」と笑って答える。

お菊は腹を空かせたイヤミに食事を振る舞い、それを貪るイヤミの横でかつてのように自分の身の上を語る。

天涯孤独で目の見えなかった自分を拾って親切にしてくれたおじさんが居たこと。

そのおじさんのおかげで目が見えるようになったこと。

いつかそのおじさんに恩返しがしたいと思い、こうして働いてお金を貯めていること。

それを聞いて涙するイヤミ。

「そうだ。このお金おじさんにあげる」と貯めていたお金を差し出そうとするお菊に「いつか会える日まで取っておいた方がいいざんす」と拒否するイヤミ。

その声を聞いて、「あら、おじさんの声あのおじさんにそっくり…」と気づきかけるお菊に慌てて「ひと違いざんす」と否定したイヤミは足早にその場を去る。


「お菊ちゃん…しあわせになるんざんすよ」と涙を浮かべるイヤミ。
足元に寄ってきた痩せさばらえた野良猫を拾い上げると、それを抱いてしっかりとした足取りで歩いていくのだった。

*****


もう書いてて泣ける(T_T)

このお話は古典映画の名作、チャップリンの「街の灯」をベースにしています。

が、それを上回る感動を与えてくれる作品になっていると思います。
そこにはこの作品に赤塚先生自身のダンディズムとロマンチシズムが大いに込められているからです。


「街の灯」では花売りの少女は主人公の浮浪者をお金持ちの紳士だと勘違いし、主人公もそれを糺さずお金持ちであるかのように振る舞います。

しかしイヤミは自分が貧乏である事を明かした上で少女を養います。

それまでイヤミが働いてなかったのは、グータラなだけではなくさむらいとしての誇りから町人に混じって働く事を良しとしなかったプライドがあったのですが、それを曲げてまで少女を守ると決意したのです。

そこには「貧乏は恥じることではない」という赤塚先生のメッセージが込められていると思います。


また、少女の目を治すためのお金を工面するシークエンス。
「街の灯」では主人公は酔っ払った富豪から借り受けたお金を少女に渡しますが、その後酔いが醒めた富豪から強盗の疑いをかけられて投獄されてしまいます。
無実の罪で投獄される「街の灯」に対して、イヤミは自らの手を悪事に染めてでもお金を工面します。

イヤミが御用金を奪うことを決意するシーンでは他のコマで見ることのない壮絶な表情のイヤミが描かれており、ここには赤塚先生のダンディズムが込められていると思います。


そしてラストシーン。

「街の灯」では花売りの少女は目の前のみすぼらしい浮浪者が「お金持ちの紳士」だと気付き、主人公がそれに応えて恥ずかしそうに笑うシーンで幕を閉じます。
その後2人がどうなったかを描かない余韻のある名シーンではあるのですが、赤塚先生はイヤミに名乗らず立ち去らせると言うラストに変更しました。

恐らく先生はこの映画に感動しながらも大きな不満を抱いたのだと思います。

花売りの少女が主人公をずっとお金持ちだと思い込んでいたり、ラストでは少女が出所した浮浪者の男を見て笑うといった残酷なカットもあります。
そこにはチャップリンの他の映画にも見受けられる資本主義、拝金主義に対する皮肉が込められていたのだろうと思いますが、赤塚先生のロマンチシズムにはそれがどうにも我慢のならないものであったのではないでしょうか。

その不満を自らの創作意欲に転化させ、オリジナルを超える感動の作品を作り上げた赤塚先生。
これをパクリと批判する事は誰にも出来ないと思います。


なのでキャラストもパクリだなんだと言う声は気にしちゃいけません!
何よりやってしまったものは仕方がない!←
ゴーサインを出した以上は本家を超える面白いものを作ればいいんです!
4周年イベントもあと2回アップデートがあるし期待しましょう!




ちなみに任天堂は「業界の発展のためなら多少の権利侵害にも目を瞑る」というスタンスなので、余程目に余らない限りは某白猫のようにはならないと思います(・∀・)


タンゴマ

コメント

1

ビギナー

ひお

ID: uirqftc365g4

イヤミー(*T^T)めっちゃいいお話しー
キャラストもきちんとキャラストらしさや工夫をしながら ポケモンイベント進めていってくれたら良いな~
今週はポケモンリーグの実装だけだったから 来集以降のストーリーどきどき ですね♪

2

圧倒的支持率

タンゴマ

ID: n9tkjvq6hd3s

>> 1
ポケモンリーグwww

キャラストらしさって自分で好きなキャラを育てて活躍させることだと思うんですけどね。

この3体から選べ!じゃないんだよ〜

3

りょうこ

ID: psxqzpaedvk6

チャップリン、大好き♡
映画の背景には社会に対する痛烈な批判があるのに、それを笑いに変えて(それも無言で)表現する・・・
ついつい旅日誌を書く時には批判的なことを書いてしまいがちですが、そんな時こそユーモアを交えて書くように心掛けようと思いました(◎_◎;)マジメカ!!

4

圧倒的支持率

タンゴマ

ID: n9tkjvq6hd3s

>> 3
チャップリンの映画久々に観たいなーと思ってキッド探したら今YouTubeで観られるんですね!
キッドなんて100年前の映画ですよ!そんなモノが入手に苦労することなく観られるなんてええ時代や…