——さて、
そんな「亀完備」のギルドに入った訳ですが、
加入した頃は毎日が緊張の連続、
ただ挨拶するにも一苦労。
ゲームで緊張するってなんだろう……
「面白い会話が出来るだろうか」
「気の利いた事が言えるだろうか」
「攻略で失敗して迷惑をかけないだろうか」
「ギルドイベントで頑張れるだろうか」
そんな事ばかり考えていました。
しかし、人間とは不思議なもので
良くも悪くも“慣れ”というものを経験すると、
次第に会話やPTでのマルチバトルも増え、
当初の心配をよそに
毎日ログインするのが楽しみになったのです。
もちろん、
ギルドの方針や自分のプレイスタイルが
たまたま合っていたりと、
今思えば「ご縁」だったのでしょうね。
おかげさまで、拙(つたな)いチャットも
少しずつ打てるようになり、
ようやく落ち着いて 自分の意思を
伝えられる様になりました。
ギルドはマスターが代替わりをして
今も引き続き存続しておりますが、
亀さんの多忙による 「突然の脱退宣言」は
少し寂しくもあり 切なくもあり、
感慨深い気持ちでいっぱいに。
気付けば、
あっという間に1年も経っていたので、
当然といえば 当然ですよね……
けれども、それ以上にやった事のない
沢山のコンテンツを経験したり、
亀さん含め、サブマスターや
ギルドメンバーとの何気ない会話が
ただただ面白くて、
皆さんには心から感謝しかありません。
ソロでやってきた自分に、
今はもう無くなった「エニグマ攻略」を
初めて教えてもらった場所でもありましたが、
この機会に一人でエニグマを
どこまでやれるか挑戦してみようと、
自身も同じく脱退の道を選びました。
結果として、
亀さんとは別れる事になったのですが、
何かある度イベントや討滅、
伝説でお世話になり
「こうやってMMO の世界は繋がって行くのか」
と改めて教えられたのです。
お互いに同年代、同世代だったのも相まって、
打ち解けるまで 然程(さほど)
時間はかかりませんでした。
討滅で失敗しても「大丈夫、大丈夫」と、
笑ってくれる方でした。
酔っ払うとオネェになって、
モヤモヤすると毒を吐く。
人間臭くて面白い方でした。
伝説のおじさんを
“オジサンとオジサン”で 倒しに行く。
洒落て気が利く、乙(おつ)な方でした。
あれこれしつこく、詮索(せんさく)しない。
だからといって、投げっぱなしにもしない。
絶妙な距離感で遊んでくれる方でした。
良い意味で緊張せず、
変に気を遣(つか)わなくても良い、
一緒にいると楽な方でした。
そんな亀さんが「引退する」と言ったあの日
「今まで ありがとうね……」 と言ったあの日
「やはり引き止めるべきだったんじゃないか?」
心の何処かで それが引っ掛かっていて、
ずっとモヤモヤしていたのです。
辞めると聞いた時、頭が真っ白になりました。
亀さんとの 最後のやりとり(チャット)を
どうすれば良いのか、
どう答えてやれば良かったのか、
幾度となく見返したのがその証拠です。
でも やりたくないのに、
本人がもう決めてしまった事に対し
漠然と“ただ居て欲しい”という自分の都合で
引き止めるのは、いかがなものか?
何より かける言葉が見つかりませんでした。
万が一、たとえ戻ったとして、
以前の様にキャラバンストーリーズに
自分の時間、課金をしてまでの
情熱や愛情、面白さがあるだろうか?
ましてや開発停止で、いつまでサービスが
続くか分からない状態。
亀さんの心情を察するに
「正直、難しいだろうな」が本音でした。
「たかが ゲーム」
そう思っていたはずなのに、いざこうして
一緒に遊んだ仲間がいなくなると、
自分が想定していた以上に
失ったものは大きかったのです。
最後の会話が——
「今まで、ありがとうございました」
——これではない。
言いたかった言葉は これではない。
そこで悩みましたが、
待ってみる事にしました。
いなくなった人を待つなんて、
良くない事なのかもしれません。
戻って来いとは言いません、
「また一緒に遊びましょう」
とも言いません、
ただ、待ちたかったのです。
自分の言葉できちんと伝えたかったのです。
以前と同じように遊べなくても、
ログインだけになってしまっても——
( ´p`) (※ 8)
待ちましたよ……
大五郎、帰って来たよ
——別の日——
「ところで亀さん」
「なんだい?」
「そんな所に蒔(ま)いて実りますか?」
「明日へのたねもみ」
「実るさ」
「下にあの太郎が眠っている」
「浦島の太郎さんですか?」 (※ 9)
「・・・・・・」
「ではない?」
「11番 ・・・・・・ 」
「呼びますよ!」
「言ったら呼びますよ!!」
「石ザキ君と森ザキ君」
「来たら倒すさ」
「ツインシュートで倒すさ!」
「そしたら来るよ! 若ザラキ君!!」 (※10)
「おじさん知らないよ?」
「どうなっても知らないよ?」
「ザラキの剣八君も来るよ!」
「あっちの十一番、本職だよ?」
「偉い人もいっぱい来るんだよ!」
「やあーだ!」「それやーだ!」
「11番やーだ!」
「子供か!!」
最後に、言い忘れるところでした。
亀さんの誕生日は 「11月11日」です。(※11)
色々な意味でこの日誌、大丈夫なんだろうか?
偉い人にいっぱい怒られるかもしれません。
「あなたは、亀を信じますか?」
【脚注一覧】
(※ 1)
亀子玉(かめこだま)
肛門近くにある虹の玉。
悪い物ではなく、基本健康であれば
毎日出る。
(※ 2)
その道のハジけた者達が使う、世紀末の
バチくそ痛い 痛いなんてもんじゃない棒。
仏壇の「りん」や野球の「バット」タイプも
あり。ハジけリスト愛用の武器。
(※ 3)
亀さんのアバターはメルロ。
本名:メルロ・ゾルガロ・マーミットです。
(※ 4)
小麦農家ライオットさんに嫉妬した、
果実農家ミグノノさんが
提供してくれました。
(※ 5)
出張先では御当地グルメよりも食べたとか。
(※ 6)
御神体はガトーショコラになりました。
(※ 7)
以下 -亀様を祀(まつ)る祝詞(のりと)-
Min! Syu達が 亀を刺激する
ナマ亀 魅惑の マーミット
出すモノ出して ダークマターも出たら
宝物(ホンモノ)の亀子玉 でる かいっ
(※ 8)
亀さんがいつも使う顔文字。
(※ 9)
太郎さんは竜宮城から別の亀と戻る途中、
太平洋沖で海上保安庁に捕まりました。
(※10)
さすがあの世の守護神(ゲートキーパー)
亀子玉2〜3個持って行かれて、
延長「佐渡んDeath」まで持ち越しました。
(※11)
これが嘘みたいな本当の話。
ファイナルファンタジー。
——出演者——
佐渡島を愛するみなさん
世紀末のあらくれもの
ライフセーバーのクラウチさん
浦島太郎さん
徳川綱吉将軍
破壊のバリカン
佐渡もんの剛田
湾岸警察ポセイドン
メンダコ
毒味役
亀武者
鍋奉行
囚人のみなさん
蝶々サンバ隊のみなさん
チャンバ
亀さんの弟子達
キビ玉になったベビードラゴン
カレーの妖精 山下
魔界の貴公子コマンタレブー
池戸さん
石ザキくん
森ザキくん
硬えフラムさん
悪魔のひざ小僧リョータ
江戸っ子妖怪てやんでい
カーネニー・モノイワセール
ザリガニさん
村長モーロヘーヤ
大怪獣バッカ・デッカーイ
ジェットバズーカ 村井
ライオット
ミグノノ
伝説のおじさん
バトルサイボーグ 田中
チャン・リン・シャン
若ザラキくん
十一番隊隊長
とにかく偉い人
イアルの全てのプレイヤー
エッダ
マルマ
パダノア
モグラ
亀さん(メルロ)
——脚本・演出——
トロフィム
モズク
——撮影・照明・録音——
ポルカ
——整音・音楽・音響効果——
アルメイダル
マググラ
ロロミュ
ザラ
グァラル
サーヴェイン
——特殊効果・火薬・爆破——
パットン
ロッコ
ボロディン
——小道具・衣装協力——
マーサ
タルフォ
タイガーキング
サリバン
サリバン
ガルフスタン
ポロックス
——演技指導・殺陣指導——
ヴォグイラ
ネルル
ラルフ
カラミティ
ウスグモ
——ヘアメイク・特殊メイク——
リッタリア
クレヴィス
——美術・大道具——
ピエト
ハヤミ
——踊り・振り付け——
ジリアン
ピッツ
——出資協力——
サメから亀を見守り隊
産んでる貴方を見てい隊
亀の涙をぬぐい隊
産んだ卵に砂かけ隊
大富豪カーネニー商会(株)
——参考文献・資料——
『亀伝説・佐渡島』
『初心者でも飼える・亀さん』
『正しい冬眠のさせ方』
『亀さん時間ですよ!』
——取材協力——
ポロックス
ミリア
エルヴィ
バロア
ナガル中正官
——ロケーション——
世紀末の佐渡島
二つ亀海水浴場
南ロストフ荒野
イアル
奈落の大階層
経験値の獲域
冬眠の向こう側
——主題歌・挿入歌——
『年の功より亀の攻』
作詞: 山田ザビエル吉祥寺
作曲: マシンガン木下
編曲: チャラくらげぇ
『エクスカリバー譲ってくれませんか?』
作詞: 伝説のオネェ
作曲: マーリン鈴木
編曲: アーサー山本
『王様はひのきの棒で充分です』
作詞: ランスロット伊藤
作曲: ランスロット伊藤
編曲: ランスロット伊藤
『ただ笑ってくれたら嬉しい』
作詞: 読んで暮て有賀刀
作曲: 色々睡魔千
編曲: 跳躍黄金期世代
演奏: オッさん頑張った
——制作・総指揮——
『3匹のモグラ』
待ってたモグラ
信じたモグラ
救われたモグラ
——制作プロダクション——
『モグラの穴』
—𓆉 Hutatu kame ⌘ entertainment 𓆉—
〜Fin〜
✍︎ あとがき ✍︎
亀さん……
あの日、こんな自分に声をかけてくれて
本当にありがとうございました。
モグラのオッサンは、
最近 なんだか涙もろくなりました。
「一度くらい、誰かと一緒に遊んでみるか」
「どうせなら、強い人より、面白い人がいい」
あの決断は、間違いではなかったなあ。
この世に「当たり前」なんてものはなく、
「絶対」なんてものもない。
自分にとって
「亀さんや、みんなと出会えたこと」
それこそまさに『MMORPG』でした。
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