四季(前科8犯)の旅日誌

公開

A Story ~ Justice~


~ Prologue ~

これは、

ある場所、ある時代の、

異なる正義の物語。




~ 1. ある若者の正義 ~

幼いころから、
常に笑顔で国民に語りかけてした
王の下で働きたいと必死に勉強してきた。

国を平穏に治める王の力となるため、
どのようにすれば国が豊かになり、
どのようにすれば他国とともに歩んでいけるか。

15歳で念願であった王の下で働くことが許された。

王はいつでも優しく語り掛けてくれる。

王が即位してから、他国との大きな戦争はない。

平和を愛する王だからこそ、
この数年平穏が保たれているのだ。

私も微力ではあるが、
この平穏に貢献できていると自負している。

そして、
王の念願であった、
多種族との和平に向けた交渉が始まった。

これからの交渉によって
国の未来、そしてイアルの未来が
どうのように進んでいくかが決まるのだ。

私の正義は、王とともにある。


 M.C.476 ギャリオ




~ 2. ある青年の正義 ~

私の正義は誰にも知られてはいけない。

誰一人として、知る由もない。

現在の国政では私の正義は正義ではないのだ。

幼きころからずっと考えてきた。

何故我々はここにいるのだ?

何故我々はこの国で生きているのだ?

何故我々は虐げられるのか?


考え抜いた末、国の内部に入り込むことが近道だと気付いた。

蟷螂に宿る虫のように。

蝸牛に宿る虫のように。

内部から、少しずつ、少しずつ。

この国は国民が知らない秘密を抱えている。

その秘密を暴き、

それを手にすることが、

私の、我々の正義の始まりなのだ。


 M.C.476 フェントルアン




~ 3. 正義における対立 ~



-- M.C.478 城内執務室にて --

「貴殿は勘違いしている!陛下は他種族との和平交渉を進められているのです!」
「それでは甘いといっておる。」

「なにが甘いというのですか?エルフ領の外交官も和平に向け着々と準備を進められています!」
「エルフだけであろう。オークやドワーフなどとの話はついておらぬではないか」

「...しかし、陛下はこの国の、イアルの平穏を望んでおられる!和平交渉は進めるべきではありませんか!?」
「好戦的なオークが和平に応じるとは思えぬ。エルフもドワーフに対して強固な姿勢を貫いているではないか」

「...いずれオーク、ドワーフに対しても和平交渉を始めるのです。エルフと我々が和平を結べばきっと、」
「エルフは以前としてドワーフに強固な姿勢をとっている。和平が結ばれたときエルフがドワーフと戦うために兵を出せと要求されたらどうするのだ」

「そんな条約を結ぶわけありません!あくまで、最初は2国間、そしていずれはイアル全土での条約となるのです!」
「歴史を学んでおらぬのか。いつの世も争いは尽きないものなのだ」

「それを変えるのです!何故わからないのですか!」
「変わらぬよ。王が変えられるとお思いか?国民が影で王をなんと呼んでおるか知っているであろう」

「…」
「凡庸王だぞ。先代の王はその軍事力、戦略から暗黒王と恐れられた先代の王がこの国を作るときに力を借りたドワーフ、オークとその後交戦状態となった。しかし、軍事力を高めることで現在までこの国が保たれてきたのだ」

「…貴殿は、陛下を先代陛下のようにしたいのですか。憎まれ、暗殺された先代陛下のように…」

「いつの世も、憎まれる存在と崇められる存在が必要なのだよ」

「こっ、これ以上は議論になりません!とにかく、和平交渉は規定路線なのです!失礼!」


-- 同日城内居住区にて --

「...まだ甘いな。王などいくらでも替えがあるというのに」
「よろしいでしょうか?」
「あぁ、どうした。」

「ギャリオ殿にあのようなことを言ってよろしいのですか?」
「あぁ。聞いていたか。王の耳に入ることも想定内だ。」

「しかし、陛下のご意思に反すると追放される危険性が…」
「それもまた想定内だ。まだまだ時間を要するのだよ。」
「それは愚問を申しました。」

「しかし、そろそろ頃合かも知れぬな。」
「...頃合とは?」
「王子のことよ。信頼を勝ち取るという意味では既に達成しつつある。」

「それではそろそろ教会に?」
「いや、教会はまだ先だ。その前にやることがある。」
「執筆されている書物ですね。」
「このまま行くと一旦野に下ることになるであろうな。その時こそ、我々の正義の一端を皆が知ることになるのだ」




~ 4. 正義の書 ~

 私が書くこの書には、
 真の正義が書かれている。

 ~ 中略 ~

 以上のように、この国の歴史を紐解けば
 やはり軍事力を強化することにより
 対外へ牽制を行い、
 豊かな国を作っていくことが肝要であると
 わかる。

 「ダルキソスの業眼」により作られた
 この国こそが、
 圧倒的な軍事力を持ってイアルを
 安寧の地へと発展させるのである。

 ~中略~

 しかし、この考えを持った私は、
 国政を離れることになった。

 今思えば確かに過激な考え方で
 あったのであろう。

 他種族間の和平交渉はす少しずつ進んでいる。

 故に、現時点で軍事力を強化せず、
 国内の基盤を強固なものにし、

 他種族から侮蔑されぬ程度の力を
 持つことが望ましいと考えるに至った。

 国内での意思統一を行い、
 それに向かい進んでいくことが
 この国を豊かにする第一歩なのである。

 意思統一に向け、
 教会の教義をすべての国民に
 教育していくことが...

 ~ 中略 ~

 この国が真に豊かに、
 真の正義に向かっていくことを祈る。




~ 5. 正義の影 ~



-- M.C.483 謁見の間にて --

「陛下。やはり私は反対です。何故フェントルアンを城内に戻すのですか?」
「ギャリオ、何故そんなに反対するのだ?ヴァルメロンを読んだであろう?」

「「正義の書」ですね。しかし、あれが本心とはどうしても思えないのです」
「しかし、教会が枢機卿と認めたのだぞ。教会の代表である枢機卿が城内に入り教義を広めていくことは間違ってはいないと思わないか?」
 
「それ自体は間違っているとは思いません。しかし、そもそも枢機卿にフェントルアンが選ばれたこと自体に」
「ギャリオ、フェントルアンではない。ヴァーミッド卿と呼べ。」

「... ヴァーミッド卿の真の目的がわかりほせん。あの書も自身の考えを書いたというより…」
「不審なことがあればギャリオ、君がどうにかすればよいではないか。宰相は君だ」

「はっ。しかし、教会が関係してくると何かと難しいことに...」
「なぁに。私や息子が殺されるわけではないであろう。わっはっは!」
「...」

「陛下...「ダルキソスの業眼」とはいったい何のことなのでしょうか」
「...そなたが知ることではない」

「私には「ダルキソスの業眼」というものを世に知らしめるために書かれた書物だと思うのです」
「だとしてもだ。知らなくてよいこともあるのだ。その件については知らなくてもよい」
「...ご無礼致しました 失礼致します」



「...知らなくてよいのだ。使われなければ、使わなければそれでよいのだ...あれこそが、一族の呪われた血の元凶なのだ…」


-- MC.484 教会裁判所にて --

「以上のように、証拠不十分であるため、ギャリオ·ミハイロス氏による提訴は棄却とする。」

「さ、裁判官殿。しかし、ヴァーミッド卿による城内での不審な動きは何人も目撃しております!」
「ミハイロス殿、その目撃者は今、どこにいるのですか?」

「それ自体も問題なのです!私が話を聞いた全ての兵士が行方不明になっているのです!」
「ミハイロス殿が兵士に話を聞いたということすら証拠がないのですよ?」

「くっ...しかし、現に国内で誘拐事件が多発しているのです!ヴァーミッド卿が人体実験をしている何よりの」
「ミハイロス殿!誘拐事件と本件はなんら関係のないことではありませぬか?」
「...」

「教会としては、これ以上、ヴァーミッド卿を陥れるような真似はやめていただきたいのです。」
「...」

...

-- M.C.485 教会執務室にて --

「ヴァーミッド!助けて助けて!」

「王子、どうされたのです?」
「母上様が…母上様が城を出て行かれて!」

「...王子は何故それを?」
「一緒に行きましょうといわれたんだ!でも、ヴァーミッドにいわれてたから...」
「母上様が何か言っても信じてはいけないという話ですね?」
「うん。でも、でも!母上様が出て行くなんておかしいよ!なんで、なんで...」
「王子、承知しました。今すぐ捜索隊を派遣致します。ご安心を」
「母上様、母上様…」



-- 5分後 黒角騎士団部屋にて --

「団長。由々しき事態となった」
「はっ!何か起きましたか?」

「フィメラ王妃と王女が何者かに誘拐された」
「なんと!しかし警備は厳重かと…」

「城内のものの仕業かも知れぬ」
「ま、まさか..」

「国内をくまなく探し、なんとしても見つけ出すのだ」
「はっ!黒角騎士団の名にかけて!」


-- 翌日 教会執務室にて --

「よろしいでしょうか?」
「あぁ、どうした」

「フィメラ王妃は自害されていたとのことです」
「そうか。殺す手間が省けたな。王女はどうした?」

「王女と兵士一名の行方はわかっておりません」

「...近くに村があったであろう」
「...フォルカ村ですね」
「確かウェインというものが住んでいるはず」
「聞いたことの無い者です」

「…村を監視しろ」
「その村に隠れていると?」
「あぁ、多分な。頼れるところはそこしかない」
「発見した場合はどうされますか?」
「...たかが小娘一人。不穏な動きが無ければそのままでよい」

「はっ。もう一つ。団長が誘拐事件ではないと感づしております」
「ほう。ただの人形ではなかったか」
「…いかがされますか」
「とりあえず団長からはずせ。あとは任せる」
「..はっ」




~ 6. 正義の行方 ~



-- M.C.486 謁見の間にて --

「なるほど。確かに幾多の戦争におりこの城も劣化してきているのは気になっておった」
「和平交渉で他国の方がこられた際、剥がれた壁を見てどう思いましょうか?」
「うむ。ヴァーミッド卿のいう通りかも知れぬな。ギャリオ!どう思う?」

「...はっ。ヴァーミッド卿の仰るとおり、一度改修を行ったほうがよいかと...」

「そうか!では城の改修は全てヴァーミッド卿に任せてよろしいか?」
「グルカン王の仰せのままに。私は教会の代表ですので、責任者はフォーゼットに任せようと思っております」
「ソムレイソだな!うむ!歴史ある家のものだ。きっとよい城にしてくれるだろうな!」
「はっ。では早速」




「..フェントルアンめ、何を企んでいるんだ...」


-- M.C.487 教会執務室にて --

「フォーゼッド殿、いかが致した?」
「発案者のヴァーミッド卿のお耳には入れておいたほうがよいかと思いまして」

「ほう。なにか出てきましたかな?」
「...はい。図面に載っていない空間がありまして」
「ほう」

「壁を崩し内部を調査しました」
「...」

「部屋の中は魔力に満ち満ちており、中央にある物から発せられていたかと」
「なるほど。それは危険なものかもしれませんな」

「内部にある計測器や機器を見る限り、あまり触れぬほうがよいかと」
「..その部屋はこちらで責任を持って対処しましょう」

「...」
「フォーゼッド殿、どうされた?」

「ヴァーミッド卿、あれは一体..。」
「さぁ?こちらで調査してみないことにはなんともいえませんな」

「あれは、あれが「ダルキソスの業眼」ではないのですか!?」
「...」

「ヴァーミッド卿!「ダルキソスの業眼」は決して触れてはいけないものです!」
「...フォーゼッド殿は「ダルキソスの業眼」が何か知っておられるのか?」
「い、いえ、詳しくは...しかし!もしあれが「ダルキソスの業眼」であるならば」

「フォーゼッド殿…何度言わせるのですか?」
「...いや」

「こちらにお任せいただきたい」
「...しかし」

「こちらにお任せいただきたい」
「...わかりました。では他の部分の工事を優先して行います...」

「お願いします。ともあれ工事はもうすぐ終わりでしょう?」
「...はい」
「無事に終わることを祈っていますよ」
「...はい」


-- 同日 教会執務室にて --

「ソムレインが感づいておる」
「...事故に見せかけますか?」

「いや、工事はまだ終わっておらぬ」
「では完了後に?」

「完了後では事故に見せかけられぬ。一応私も責任者であるしな」
「...いかがいたしましょうか?」

「たやすいことだ。何も見えず、何も言えず、外部と接触できないようにすればよい」
「...なるほど」

「歴史だけの旧家などそれだけでよい」
「はっ」

「ソムレインは王も気に入っておるからな。王も納得できるようにせねばならぬ」
「承知しました。では完了後に」


...


-- M.C.487 謁見の間にて --

「…どうにかならぬのか?」
「国で決まった法律です。不敬罪は本来死刑となります」

「…ソムレインが悪いとは思えぬのだが…」
「公の場で坑夫の助命をしたのです。王に対する不敬罪となるのです」

「…死刑だけは避けられないか?」
「フォーゼッド殿は改修を成功させた功労者です。もちろん減刑されるように尽力します」

「…うむ。頼んだぞ。命をとるようなことはしないでくれ…」





-- 同日 教会執務室にて --

「うまくやったな」
「はっ」

「ソムレインはいつ死ぬ?」
「長くて5年、早くて3年ほどで事切れましょう」

「うむ、ちょうど良い時期だ」
「王子ですか?」

「その頃には自在に操れるであろう」
「そうですか。ようやく...」

「あぁ、ようやく、始まるのだ」




~ 7. 血塗られた正義 ~



-- M.C.490 陛下寝室にて --

「どういうことだ!」
「…」

「ウォルリック!目を覚ませ!」
「…」

「くっ。ヴァーミッド!これは、貴様っ!!」
「王よ。この国はこれから生まれ変わるのですよ」
「生まれ変わる!?何を言っておるのだっ!」

「新しい王の下、他国を圧倒する武力を手にするのです」
「新しい王だと?ウォルリックにそのようなことができるはずがない!」

「ほう。なぜそうお思いなのです?」
「ウォルリックには私の全てを教えてきたのだ!平和とは何か!正義とは何か!」

「…王子、平和とは何ですか?正義とは何ですか?」
「…全てをも飲み込むカ、人間による統一…」

「!!」

「王よ。王子はこのように言っているのですよ」
「ヴァーミッド!!貴様!ウォルリックに何をした!」
「ふっ。本当に凡庸でしたね。貴方は」


「…父上…」
「!?ウォルリック!そうだっ!父だっ!」






「…私が 王となる…」





-- 同日 謁見の間にて --

「ヴァーミッド卿!一体何が!?」
「ミハイロス殿、王が自害された」

「い、いや、ま、まさかそんな…」
「宰相であるミハイロス殿は気付いておられなかったのか?」

「気付く?何をです!?」
「王は、あの誘拐事件から気を病んでおられた」
「はっ、いや、そんなはずは…」

「教会によくこられ、守ってやれなかったと悔いておられた」
「…」

「お救いできなかったことは教会としてもなんといってよいか」
「…ヴァーミッド卿、その話は本当ですか?」

「…疑っておられるのですか?」
「何者かに襲われた可能性もあるでしょう!なぜ自害と決め付けるのです!」

「…医師の診断ですが」
「教会側の医師でしょう!この件、黒角騎士団に調査させ」


「もうよい」


「!ウ、ウォルリック王子…」
「ミハイロスよ、もうよいのだ」

「し、しかし、貴方の父上です!」
「自害するような弱き者は父などではない」

「…ウォルリック王子…」

「ミハイロス殿、陛下もこう言っておられる」
「陛下?陛下だと!?」

「王が亡くなったのだ。嫡子のウォルリック王子が国王陛下となるべきであろう」
「…ヴァーミッド卿、貴方は今まで国王陛下を「王」と呼んできた」

「…」
「ウォルリック王子のことを何故「陛下」と呼ぶのだ!」

「…尊敬すべき君主を「陛下」と呼ぶのだよ」
「な、なんだとっ!グルカン国王陛下を侮辱しているのかっ!」


「ミハイロス…グルカン国王は、私だ」


「ミハイロス殿、陛下の御前ですよ」

「…くっ、とにかく、すぐに重臣会議の準備を、失礼…」





「陛下…ミハイロス殿は何か企んでいるようですな」
「…そうか。好きにせい」





~ Epilogue. 奪われた正義の為に ~

やっとここまできた。

ここまでは全て思い描いていた通りになっている。

しかし、

まだ始まったばかりだ。


ウォルリックを王とし、

私の思うままに国を操る。

邪魔なものは全て排除してきた。


やっと次の段階に進めるのだ。


人間を分断し、

他種族と戦争し、

徐々に弱らせていくのだ。


蟷螂に宿る虫のように。

蝸牛に宿る虫のように。


そして、

ヴァルメルが、

憎きグロスカッドが弱りきったその時、

我々は復活するのだ。


我々を地獄に落とし、

我々の地位、名誉、血、

そして何よりも、

我々の正義を奪い取った。

この「ダルキソスの業眼」によって、

我々の正義は達せられるのだ。


その時がくるまでは

蟷螂に宿る虫のように。

蝸牛に宿る虫のように。



~ Epilogue. 新しい正義の為に ~

額の傷が疼く。

意識が遠のいていく。


謂れのない罪。

罪人の証、

額の傷。


自分の信じてきた正義。

間違っていたのか?

陛下と共に、

平和な世を作るために、

沢山のものを犠牲にしてきた。

どこで道を間違えた?

全てはフェントルアンが仕組んだ罠だ。

陛下はフェントルアンに操られている。

しかし、

誰もそのことに気付いていない。

ヴァーミッド卿として教会を手中に収め、

ヴァルメルも最早あいつのものになりつつある。

平和な世、

作れるはずだった。

陛下と共に。


あいつが、

あいつが、

あいつさえいなければ、

ここまで逃れてきたが、もうここまでなのか。





「おい貴様、生きておるか」
「…あぁ」

「貴様、人間だな」
「…」

「貴様の額の傷…罪人か?」
「…違う」

「ふぅむ…では何故額に罪人の証があるのだ?」
「…嵌められたのだ。己の不明だ」

「…死にそうに見えるが、その目は何だ」
「…」
「その目は、死を目前とした者の目ではないぞ」
「…ああ。やらなければならないことがある」

「ほう。何をするのだ?」
「…復讐」

「貴様を嵌めた者への復讐か?」
「あぁ。それが私の正義だ」

「復讐が正義と…貴様、何かできることはあるか?」
「軍略には覚えがある」

「人間の軍略か。敵の手の内を知るのもいいかもしれぬな」
「…」

「我の下へ来い。貴様の正義とは違うかも知れぬが」
「…」

「我が名はゾルバ。オークの王となり日も浅い。戦力となるものを探しておった」
「ゾルバ…王…」

「どうする?人間よ」
「…行こう。私の正義は変わらないが」

「…復讐では何も変わらぬと思うがな」
「…」

「我が下へ来るのであれば、オークになった貰わなければならぬ」
「…仮面でも被ろう。額の傷も見られてはまずいだろう」

「うむ。貴様、名をなんという?」
「…ミハイロスだ」

「その名は今日限り捨てよ。これからはオークとして生きていくのだ」
「…あぁ」

「貴様のその目、怒り、悲しみに満ち満ちた、漆黒の目」
「…」

「オークの言葉で"黒い目"という意味の名を授ける」
「黒い…目…」














「貴様の名は、ヴォグイラだ」
























~ Another Prologue ~

お父様が死んだ。

私が物心ついた時、お父様はお城で立派な仕事をしていた。

数年たったある時、お父様は変わり果てた姿で帰ってこられた。

罪人として、

仮面を被らされ、

見ることを許されず、

伝えることを許されず

辱めを受けて生きていけと。


しかし、

お父様が見たものは、

しっかりと私に伝わった。

あの時なぜ強く抵抗しなかったのか。
なぜあれを見つけ、報告してしまったのか。
一族として汚点を残してしまった。
このままではこの国はあいつの手に。


後悔。

憎悪。


敵ははっきりとしている。


死に絶えたお父様の、

その真っ白な顔の、

忌み深き仮面を手に取る。


私は、

お父様の仇をとるため、

この国を守るため、

一族の名誉を守るため、

お父様の意思を継ぎ、

血塗られた仮面を被る。


誰の命令でもない。

誰の指図でもない。


これは、私の決意なのだ。



to be continued

__________________________________
T.P.




四季(前科8犯)

コメント

26

四季(前科8犯)

ID: fkdfpjcdrzxt

>> 25
エミリーは基本顔見えないので、
唇だけで誰だか分かるよう、
叶恭子さんにお願いします。

27

ンコ

ID: ezi7w2du2ba7

またたぎらせていただきました!
鳥肌たたせるの上手ですね!(いい意味での!)

28

四季(前科8犯)

ID: fkdfpjcdrzxt

>> 27
嬉しい…
今後もたまーに書こうと思います(`・ω・´)キリッ

29

1000いいね達成

セツナ∞◕ᴥ◕∞

ID: 7yayb3k2vpvi

キャラストーリーはいつも断片的過ぎてさっぱりでしたが・・・
こういう話だったんですね~♪
すごい臨場感です!ゾクゾクしました( ´ω` )
つづき楽しみです(*˘︶˘*)

30

イアルの冒険者

玲瓏の常夜ギンコ

ID: mpz99vwbkac4

今回もタップリ読みごたえがあってうれしいっす!(๑>◡<๑)
あっ、書籍化したらサイン会開いて下さいね!
コッソリ並びます!( ・`ー・´) + キリッ
毎週書いてくださり有難うございます!

31

1000いいね達成

セツナ∞◕ᴥ◕∞

ID: 7yayb3k2vpvi

言いそびれましたが・・

「紅葉の街SSコンテスト】入賞おめでとうございます
✲゚。.(✿╹◡╹)ノ☆.。₀:*゚✲゚*:₀。

32

イアルの冒険者

kiki

ID: ruart6pi2a9z

素晴らしい(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ
最初誰だ…名前…誰だってら読み進めてたら、あーあの人か、おーあの人!(どんな人か分かってないけど)
なるほどー!ってなりました

やっぱり凄い…四季ぴょん…
SSコンテストもおめでとうございます♪
四季さんの時代きたね、サイン早めに貰っとかないと✧(✪д✪)✧

33

四季(前科8犯)

ID: fkdfpjcdrzxt

>> 29
色々纏めるとなるほどねって思います。
エッダとかも絡んでくるとまた一味変わってくると思うんですが…

34

四季(前科8犯)

ID: fkdfpjcdrzxt

>> 30
列日
島本

四季

お納めくださいm(*_ _)m

35

四季(前科8犯)

ID: fkdfpjcdrzxt

>> 31
ありがとーんす!!!

36

四季(前科8犯)

ID: fkdfpjcdrzxt

>> 32
今後どうなるのか、ストーリーが楽しみ!

お納めください。

春夏
秋冬

四季

37

ンコ

ID: ezi7w2du2ba7

>> 28
楽しみすぎていいね忘れてましたorz