こころベーカリーの旅日誌

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謎のNPC<第7回>:ミローナ

【お月見イベント 30回繰返し戦闘クエスト「ミローナ」】

「ミローナいるかい?今日はイノシシを狩ってきたよ」
「まぁ、ならイノシシ鍋にする?」
「いいねぇ。昼寝でもしながら待ってるよ」
イノシシを担いで家に来た彼を、私は笑顔で迎えた。


彼は数か月前に、ふらっとこの集落に現れた。
流れの狩人だという彼は、この集落で暮らし始めたが宿なしだったので、私がこうして食事を用意してあげていた。

なぜって?
ちょっとカッコよかったから♡

「なぁ、ミローナ。今度の満月の夜、一緒に月でも見ながら過ごさないか」
突然の言葉にドキッとした。
こんなお誘いは初めてだ。
「それってデートかしら?」
平静を装って質問する…が、心臓はバクバクだった。
「まぁ、そんなとこかな」
「い、いいわよ」
しまった、声がうわずってしまった…変に思われなかったかしら…
満月の夜…3日後ね。楽しみだわ♪


翌日また来客があった。
彼かと思ったが違った。
「ウサギの里と呼ばれる集落はここですか?」
そう聞いてきた男性は、旅の薬剤師だそうだ。
「ええ、確かにウサギの里と呼ばれています」
この辺りは、なぜか昔から野生のウサギが多いことから、そう呼ばれていた。
「実は薬の調合でウサギのしっぽが30個ほど必要でして。腕の良い猟師がいれば紹介いただきたいのですが」
「まぁ、それでしたら心当たりがあります。ウサギ30羽くらい、すぐですよ」
私は彼との話題が増えたことに、単純に喜んでいた。

次の日、さっそく彼に薬剤師からの依頼を話した。しかし、
「ダメだ!その依頼は受けられない…」
彼は急に不機嫌になり、冷たい声で
「君もその依頼は断るんだ。ウサギを傷つけてはいけないよ」
そう言い残して立ち去ってしまった。
なぜ彼が不機嫌になったのかわからなかったが、薬剤師の依頼は報酬もよかったし、前金ももらってしまっていた。
「ウサギなら私でもなんとかなるかな」
私は自分でウサギを狩ることにした。

「よし!これで29羽!思ったより簡単ね♪」
ウサギの里は文字通りウサギがたくさんいるし、外敵が少ないためか大人しい子ばかりだ。
私は意気揚々と30羽目を探し始めた。
その時、突然背後に人の気配がした。
振り返ると彼がいた。
「なにを…しているっ…」
彼の表情を見た瞬間、私は恐怖を覚えた。
狩人の目。
獲物を狙う獰猛な目。
それが今…私に向けられている…

「な、なにって、ほら、昨日話した薬剤師からの依頼。あなたが受けてくれないから自分でやろうと思って…。見て、もう30羽目よ。私もなかなかでしょ?」
自分でも不思議なくらい早口で言葉が出てきた。
まるでこの場を取り繕うように。
「ウサギを傷つけるなと言ったはずだ…」
そう言って彼は弓に矢をつがえた…私に向かって…
「え?」
その時一陣の風が吹き、彼のフードが風にはためいた。
フードの下には耳があった…ウサギの様な耳が…

「え?あなた…ゲッシーだったの?いえ違う、体は人間?あなたはいったい…」
「私は…月から来たウサギの眷属だ。そしてここは月に保護されたウサギの住まう里。私はここに住むウサギを守るために、天敵であるキツネやオオカミを狩っていた。…ウサギに危害を加えるものを排除するのが私の仕事だ。」
「ウサギに危害を加えるもの…。もしかして…わたしも?」
彼が弓を引き絞る。
私は覚悟した。
彼は本気だ。
「いいわ、あなたの手に掛かるなら悔いはない…ウサギを傷つけてごめんなさい…」

シュッ!!
矢が放たれ…しかし矢は私の横を通り抜けていった…
彼は…泣いていた…
「なぜ…なぜだ…俺はお前を…。明日の満月の夜、すべて話すつもりだった。そしてお前と一緒に月へ…くっ」
彼はその場から走り去った…
私はただ見送ることしかできなかった…


デートの約束をしていた。
満月の夜に二人でお月見をしようと…
あの約束はまだ有効なはずだ…そう思いたい。
でも彼は来なかった。
次の満月の夜も…その次の満月の夜も…

私がしたことは彼にとって許されないことかもしれない。
彼は私を殺めなければならないのかもしれない。
それでも私は彼に会いたい。
今すぐ会いたい。
どうすれば会える?
どうすれば私のもとに来てくれるの?

そうだ。ふふっ…簡単なコトだわ。彼はウサギの保護者だモノ。

『…ウサギを殺せばいいんだわ…』

そうすれば彼は私を無視できない…
私のもとに来てくれるに違いない…

満月の日に10羽殺した。
彼は現れない。

次の満月までに100羽殺した。
彼は現れない。

まだ足りないの?
もっと…もっと殺さなきゃ…
そうだ、あそこにいるキャラバンにも頼んでみよう。
私が依頼すれば、私が殺したのと同じことだわ。
そう、ただビーストとのバトルをお願いすればいい。
だってこの辺りには、どうせウサギしかいないのだから。


ねぇ、愛しいあなた。早く来て、私に会いに来て…
でないと私…この里のウサギをすべて殺してしまうわ

あぁ、そういえば…


『…あなたもウサギだったわね…』

こころベーカリー

コメント

1

lune~ルーン

ID: axi8cj95j3uz

せつないっ!!
切なすぎますミローナさん!!
知らなかったとはいえ~><

単発TVドラマ化できそうよ^^
今回もありがとう~やっぱこころさんのNPCシリーズ良い!!
今までものふくめてシリーズ短編ドラマをww
演者は誰かな!?

・・・ところで・・・さいご・・まさか・・・
ミローナさんはすでに・・・・( °᷄д°᷅;)⁾

2

圧倒的支持率

こころベーカリー

ID: gz23bzbmhrw5

>> 1
ルーンさん、ありがとう♪
今回ちょっとブラック過ぎて、受け入れてもらえるか不安だったから安心したw

それだけ喜んでもらえたなら、頑張った甲斐があったなぁ。
最近どんどん長編化してきてるけど大丈夫?w
あ、NPCが男なら短くなるかも(ぉ

いつもありがとう~♪

3

旅日誌ビギナー

てんちょ

ID: hhw5h4ea6xfc

個人的にも気にはなっていた、ミローナさんですが
相変わらず、こころさんのNPCシリーズすごい!
一気に読んでしまいました

次回作、期待していますw

4

圧倒的支持率

こころベーカリー

ID: gz23bzbmhrw5

>> 3
てんちょーさん、お褒め頂きありがとうございます♪

やだこれ、改めて読み返したら自分で見ても怖いわ(マテw
やっぱり私の妄想もNPCの雰囲気に影響されるので、次は楽天的な奴お願いします運営さんw

というわけで、次回も頑張りまーす♪

5

ビギナー

〓ふぅか〓

ID: i46vdg68vvh2

。゚(゚´ω`゚)゚。
メンがヘラッちゃってるけど切なすぎるよ〜
別れた彼氏に「誕生日のプレゼントまだ〜?」って
LINE送り続けるような…(オッ

途中、30羽目は「彼」なの?なんて短絡思考してました
さすがはこころ先生!奥が深い!(闇も…w

次回は
「頑張って終活したら呪いが不発だった件」
30歳で死ぬ呪いを受けたはずの御令嬢だったが、なんとそれは手違いで『30歳になれない』呪いだった!みんなが気になるアラサー美女のビューティ奮闘記!!

6

圧倒的支持率

こころベーカリー

ID: gz23bzbmhrw5

>> 5
ふぅかさん、ありがとう~♪
実は、ちょっと闇が深すぎるかと思って、ギャグバージョンも考えてあったんだよ。

月に帰ってしまった彼に会いに行くために、カールにロケットを作ってもらったんだけど、燃料がウサギのウンチで、ウサギにウンチをたくさんさせるために運動のため30回バトルするっていう…

うん、そっちにしなくて良かった(笑)

次回のそれはミソララちゃん後日談?(笑)
たまには後日談も良いかもね♪
気が向いたら書くかも!

いつもありがとう~♪

7

ファイ

ID: ky8rsuunpxsa

わーいつもながらすごい創作力^^
タモリさんがストーリーテラーしてるアノ番組を思い浮かべちゃいました!

8

圧倒的支持率

こころベーカリー

ID: gz23bzbmhrw5

>> 7
ありがとうございます!
確かに、あの番組もちょっと意識したかもですw

殺しちゃうのはやり過ぎかと思ったけど、中途半端も良くないと思って、思い切りました。
次回はメルヘンでいきたいなぁ♪