アオバの旅日誌

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Makeup and go : 1話 「依頼」


クレヴィス×ドワーフアヴァターの潜入モノ、
二次創作小説。恋愛要素込みです。オリジナルのモブも出るよ。
小説はスーパー初心者なので暖かい目で見てくださいまし











ポタ、と赤色が滴る。
薄暗い廊下の、真っ白な大理石の床の上。
短い叫び声、崩れ落ちる少女。
腹から引き抜かれた短剣は血に塗れ、刀身がぬらりと光った。

駆け寄ることも出来ないまま、一つ確信する。
次は、僕だ。

靴音とともに近づく絶望。
じりじりと後ずさるが、
この体格差では逃げられない、もう分かっていた。

「さようなら」

冷たい声の後ろで響く賑やかなホールの音楽が、
いやに大きく、はっきりと聞こえた。




___遡ること数日前。

9月。キャラバンはクラゲの影が増えたビーチを後にし、旅を続けている。

「う〜、あたしの夏が…かき氷、海鮮やきそば…」

ようやく水着をやめたキャナルが恨めしそうに言った。少しは暑さも和らいだというのに、テーブルに伸びた姿はまるで干からびているかのようだ。

「ドワーフ領と比べれば長い夏だったけど、それでも終わっちゃうと寂しいね」

顔を上げないままカールも呟いた。役目を終えた潜水服を、メンテするでもなく見つめている。ゴーグル焼けしたその目元は、未だ海の夢を見ていそうだ。
キャナルやカールだけではない。キャラバン全体が休み明けのうすぼんやりとした気だるさに包まれていた。

かく言う私、大怪盗クレヴィスも、今は何にも集中できる気がしない。気まぐれにコインを数えてみたり、カードを弄ったり…数日前まではバカンスに浮かれた客相手に精力的に稼いでいたというのに、全く非生産的だ。

と、そこに人が入ってくる。いつもの通りなら、何か討伐とかの依頼をこなして戻ってきた仲間なのだろう。
どやどやとダイニングに流れ込んだり、自室へ向かったり、各々休みに行くのを眺めていると
ひょこ、とテーブルの向かいに丸っこい頭が現れた。

「クレヴィス!」

「やあやあ、君か」

やってきたのはキャラバンの主。複数いる中の、私と一番親しいドワーフの少女だ。
ドいなk…バルド水道橋出身で、空気や人、言葉の機微に敏く、
私の噓を、変装を見抜いた__つまり、私と同じ詐欺師の才能がある。

ひとは誰しも自分と似たやつに惹かれるもので、
だから私も彼女のことはまあまあ気に入っているのだ。

だが今はちょっと、放っておいてほしいかもしれない。
具体的には依頼とか勘弁してほしい。ほんとに、マジで。
でもな、こういうときに限って厄介ごと持ってくるからなあ。そういうところがキャラバンの連中の面白いとこなんだけどさ…
などと私にしては長く黙って考えている間に、バサバサと彼女は紙束を取り出し、
ペンを出し、さっきの嫌な予感を的中させた。

「__依頼、受けない?」

そう言って彼女がまず指したのは、他の紙束よりかなり小さいメモのようなものだ。

“10月某日、パーティの場で屋敷を壊す。
人を引き払わなければ犠牲が出るであろう”

「これはまた古典的な…犯行予告のカードってやつだね?」

質問に答えることもなく、こちらを一瞥して説明が続く。

「届いたのはエルフ領ファーレンの地方領主の屋敷。
差出人は不明で、領主が筆跡とか調査したけどダメだったみたい」

「…ふうん」

先程も言ったが、あからさまに典型的な、
怪盗ものっぽいカードでの犯行予告だ。
だが「殺す」とも「盗む」とも明示されていない。
何が目的なのか?あえてそう書いているのか?他にも、一目で不自然だとわかる点がいくつもある。
…不覚にも少し”面白い”と思ってしまった。

考える間にもう1枚、依頼書らしき書面が差し出されていた。
まずは要点だけ言うね、と先に宣言してから、彼女はインクのついていないペン先で紙面をなぞり、読み上げる。

「依頼概要は、パーティに潜入して犯行を阻止すること。
注意事項としては、1に参加者の安全確保を最優先、2に武器の持ち込み禁止。
3。潜入が不自然にならない人数で、そして4、戦闘行為はなるべく行わない。」

「ふむ」

紙束の文章量からは信じられないほど短く、そして分かりやすい説明。
こちらの返答を待たず、かといって強引に見せない雰囲気。
こういう喋りの巧さも、もちろん詐欺師の素養だ。やっぱり面白い、と思いつつも
今回ばかりは依頼を断る方向に話をシフトしていく。

「……少数での潜入任務か。
キャラバンはこんな依頼にまで手を出してるんだねえ」

まずは言葉に嫌味を滲ませて、自分は関係ないですアピール。
実際、使い走りや討伐ならまだしも、キャラバンにこの手の仕事は向いていないと思う。

「人の命に関わる依頼なら放っておけないでしょ」

当然、といった顔で返してくる。お人好し。
その考えには同意してあげないこともないけど、
パーティそのものをとりやめるなりなんなり、私に頼らない解決法はいくらでもある。
それぐらい君も気づくはずだろ?

「残念、ぜひとも助けてあげたいところだけど
生憎今は…」

舌に任せて適当に躱そうとしたその時、
彼女はわざとらしく「あ!」と大声を上げた。

「…報酬の説明がまだだったよね?」

そう言って出されたのは四角い光る石、いや、硝子だ。
精巧なカットのおかげで光っているように見えただけだ。何かの容れ物か。思わず目を細め、
眩いその光に隠された中身を確かめようとしたその時点で、
既に彼女の思惑に嵌められていたのだろう。

20分程の”雑談”の後、
私はまんまと依頼書にサインをしていたのだった。


アオバ

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