【ハロウィンイベント 30回繰返し戦闘クエスト「サンティ」】
「ごめんくださいましー!家政婦紹介所から参りました、サンティと申しますぅ!」
ネロの中心に位置する大きなお屋敷に圧倒されながらも、第一印象が大事とばかりに声をはり上げる私に…
「そこは空き家だよ」
むなしくも教えてくれたのは後ろを歩く通行人だった。
「…空き家…?」
ここが空き家?
見事に飾り付けられたカボチャやお菓子の装飾の数々。
屋敷の中から聞こえる、パーティーでもしているかのような喧噪。
どう見ても空き家じゃない。
「あの…」
通行人に確認しようとしたが、すでに立ち去った後だった。
試しに屋敷のドアに手をかけると、
『ぎぃぃぃー』
鍵は開いていた。
そもそも空き家から家政婦派遣の依頼が来るはずがない。
きっと最近新しい家主が住み始めたに違いない。
そう考えて私は屋敷の中に入っていった…
屋敷の中はとんでもないことになっていた。
装飾されているがそれ以上に目立つ瓦礫の山。
そこかしこを駆け回る、ハロウィンの仮装をしたなにか。
これは…まさかビースト?!
警戒する私を見透かしたかのように…
(ガチャ!)
突如背後で玄関の鍵が閉まった。
「うそ!閉じ込められた?!」
押しても引いてもびくともしない。
冷や汗をかく私…そこへ
「無駄だよおばちゃん」
場違いに明るい男の子の声に振り返ると、ハロウィンの仮装をした3人の子供がいた。
「一度屋敷に入ったら、ビーストを30匹倒さないと開かないんだ」
「でも1階のビーストは弱っちいから余裕だよ」
そう教えてくれた二人は、どうやら人間の男の子のようだ。
「君たちは人間なのね」
私がほっとして訪ねると、
「うん、近所に住んでるの。」
そう答えてくれた最後の一人は女の子だった…ネロの子供ってたくましいのね。
「でも2階のビーストはちょっと手ごわいけどな」
「バルくん、さっき泣きながらパペフィーナに追いかけられてたもんね」
「言うなよポーリエ」
完全に子供の遊び場と化しているようだ…
「きみたち、ここのご主人様を知らない?」
どこかに家政婦を依頼した人物がいるはずである。
そう思って聞いてみると…
「あれかな?地下の一番奥にいるやつ」
「うん、きっとそうだよ」
少しおびえたような声になった子供たち。
「地下室があるの?」
「うん、地下は2階よりも強いビーストがたくさんいるんだ。一度隠れながら奥に行ってみたんだけど、一番奥にめっちゃ強そうなやつがいたよ。偉そうにしてたからあれがボスだよきっと」
どうやら家政婦を呼んだ主は地下の最奥にいるようだ。
「なら私は地下に行ってくるから、きみたちは早くその辺のビースト30匹倒しておうちに帰りなさい。」
「えー!もっと遊びた~い。ここ面白いんだもん。」
まぁ、遊び盛りの子供がそう簡単に言うことを聞くわけないか…
「じゃ私が戻ってくるまでに30匹倒し終わってたら、このコインをあげるわ」
「おお!すげー!見たことないぞそのコイン!」
「これが欲しければ頑張りなさい」
子供たちにそう声をかけて、私は地下に続く階段を下りて行った。
「確かに手ごわいわね…」
私は、1階とは比べようもなく強いビースト達を牽制しながら、迷路のような地下を進み、ついに最奥へとたどり着いた。
そして、奥から漂ってくる邪悪な気配に戸惑ってもいた。
私はこの気配を…知っている…
過去の忘れかけた記憶が蘇る…
私はこいつと戦ったことがある…それも何度も…
私はその者の名を呼んだ。
「おまえは…アウトレイゼル!」
そして私の呼びかけに顔を上げたアウトレイゼルは、私を睨みこう言ったのである。
「そういうお前は…まさか…魔法少女プリティーサンティ!!」
「その名で呼ばれるのは10年ぶりかしら」
「いや、30年ぶりぜる」
「余計なこと言うともう一度封印するわよ?」
そう、私は10年前(異論は認めない)魔法少女としてネロの平和を守っていた。
そしてその時に悪さをしていたのがこのアウトレイゼルだ。
「私が封印したはずのあなたが、こんなところで何してるのよ。」
「お前に封印されてから、吾輩も一応反省したぜる。たまたま封印が解けたので、この屋敷を見つけ、ひっそりと暮らしていたぜる。ところが最近ビーストや霊魂がこの屋敷に集まってきてうるさくてかなわないぜる。」
なるほど、ハロウィンで活性化したビーストやら何やらがアウトレイゼルに引き寄せられたのだろう。腐ってもさすが上級悪魔ね。
「それでうるさいあやつらを片付けてもらおうと家政婦を…」
「ちょっとまてぇーい!」
私は聞き捨てならない言葉に間髪入れずツッコミを入れた。
「どこの世界にビーストやら霊魂やらを掃除できる家政婦がいるのよ!!…いや、私は別よ…」
すました顔でこっち指すな。
「しかし、ちゃんと募集要項に掃除・洗濯・☆5ビーストを退治できる者って条件を書いたぜる」
…なるほど、それで私が派遣されたのか!
所長め、わざと黙ってたな!後で追加ボーナスを請求しなきゃ。
「それにしても数が多すぎるわ。私一人じゃ…」
「あぁ、それなら心配ないぜる。たまに物珍しさにこの屋敷に侵入するものがいるぜる。せっかくだから少し倒してもらおうと玄関に鍵をかけて…」
「お前の仕込みかい!!」
だんだん状況が飲み込めてきた。
「侵入者とはいえ、退治してもらうなら報酬くらい出したらどう?」
「うむ、そうぜるな。その辺も貴様に任すぜる」
丸投げかい!
「わかったわ。仕事はする。でも給料は上乗せしてもらうわよ」
「よいぜる…」
交渉成立ね。
やれやれとため息をつく私に、アウトレイゼルが話を続ける。
「ところで、まだあれはできるぜるか?」
「あれって何?」
「魔法少女に変身…」
「…………はい?」
何を言いだすんだ、この悪魔は。
「さすがの貴様でも変身せずに☆5ビーストは厳しぃぜるよ。変身した方がいいぜる」
…変身…できるのだろうか?私…もう少女じゃないけど(言わせるな)。
「試しにやってみたらどうぜる」
「そ、そうね」
変身呪文は…えっと…そう、まずは使い魔を呼ぶのよ…
「おいで!マジキャット!」
「はいな!マジカルキャットで変身にゃ♪」
どこからともなく現れたマジキャットがひとこと。
「…あんただれにゃ?」
使い魔のくせに失礼な奴だ。
「私よ!サンティ!忘れたの?」
「おいらの知ってるサンティと違う…」
「うるさいわね。とにかく変身よ!」
必死に呪文を思い出して唱える私。
「闇の力を秘めし鍵よ、聖なる大地の命の叫び。」
キラキラキラ
「プリティミューテーション!ピピルマフレールピーリカピリララ!」
シャキーン!
「魔法少女☆プリティサンティ!月にかわって、殲滅よ♡」
できた!変身!
服装はあの頃のまま…年齢は今のまま…
「……はぁ…あの頃は良かった…」
息の合ったため息をつくアウトレイゼルとマジキャット。
「悪かったわね!こんなで!!」
~魔法少女プリティサンティのイラスト募集中~(やめw
こうして私は自分でもビースト退治をする傍ら、不幸にも屋敷に入ってしまった人たちにビースト退治の報酬を渡すのであった。
「30匹倒したよ…魔法少女のおばちゃん」
一階に戻ると、先ほどの子供達が声をかけてきた…って、今魔法少女って言った?!
「あんた達?まさか地下でのやり取り見てたの?!」
しまった!いくらもう少女ではないと言っても、一般人に変身を見られたのはまずい!
「大丈夫、誰にも言わないよ。誰にも言えないしね。」
「え?」
見ると子供達の体がどんどん透けていく…
「ありがと。おばちゃんのおかげで今年は楽しかった。」
まさかあなたたち!
「来年も遊んでね」
「また一年後ね~♪」
そう言って3人の子供達は消えていった…
ハロウィン…それは死者の霊魂が彷徨う不思議なお祭り…
コメント
1
てんちょ
ID: hhw5h4ea6xfc
どこかで聞いたことのある変身の呪文
魔法少女だったのか、サンティおばちゃん…w
2
こころベーカリー
ID: gz23bzbmhrw5
>> 1
魔法の呪文の元ネタが全部分かった人には、魔法少女マイスターの称号を授けます(笑)
てんちょさん、コメントありがとうございます!
次回も見てくださいね♪
3
〓ふぅか〓
ID: i46vdg68vvh2
ありがとうありがとうヽ(´▽`)/
お昼寝(夕寝)してる間に大作はっぴゃう!!
アウトレイゼルでたあたりからじわるじわる😂サイコー
そして禁断の(少女でなくなった後の)変身!
逆R18指定な魔法少女衣装の装着もある意味想像力がモノをいいますww
魔法少女シリーズはちょびっとしかわかんないけど
サンティが可愛く見えてキター💕
4
こころベーカリー
ID: gz23bzbmhrw5
>> 3
いやぁ、ハロウィンにギリギリ間に合ったよw
お気に召していただけたようで、良かった♪
なるべく短くしようとは思ってるんだけど、どんどん長くなってるよね…
こんな長文、みんなよく読むよね(マテw
いや、感謝ですホントw
今後も短いのやら長いのやら色々書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いしま~す♪
魔法少女はみんなの心の中にいるよ!(笑)
この発言は削除されました(2021/10/30 00:32) 5
6
月雪
ID: rx3bgucfq2de
メンテ中にこころさんの日誌見るの好きですw
魔法少女はカードとドレミとセーラーしかわかりませんでした(´ρ`*)後何だろう
7
こころベーカリー
ID: gz23bzbmhrw5
>> 6
わー!!
今更ごめんなさい!
なんとなく過去の日誌を確認していたら、月雪さんに返信してなかったの今気付きました!
いつもご覧いだだきありがとうございます♪
まぁ、魔法少女は調べればたぶん分かるので割愛します(笑)