ルキオンの旅日誌

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慢性的金欠。これは事件だ 4

ポワトト「どうやらこの事件もクライマックスが近いようだね」
アリアロ「解決はまだ遠いのでしょうか」

「おや、フォルク君は?
「急用ができたというので、交代していただきました。私もぜひ貴公の名推理を拝見したいと思いまして
「えええええっ!? 本当に!?
「驚きすぎでしょう。ヴィンガの元に向かうそうですね。お供いたします
「ふっ。いいでしょう。今の僕は絶好調です。解決できない事件などありませんとも!

「「こんにちは
ヴィンガ「おう……? ポワトトか。なにか儲け話でも持ってきたのか
「出会い頭の挨拶にしては、ずいぶんと寂しいことを言うね。もしかして景気が悪いのかい?
「大きなお世話だ。景気は過去最高レベルにいいぜ
「ほうほう。僕の推理によると、それはゴールドダンジョンの金塊と関りがあるね?
「ねぇよ
「えっ
「俺が自分の商才で稼いだ金だよ。キャラバンのおかげでもあるけどな。情報を集めるにしても、商材を運ぶにしても、追手から逃げるにしても、一瞬で世界各地に移動できるってのがここまで便利だとは思わなかったぜ
「なんだ、そうなのか
「……(追手……?)
「そういうわけで俺は忙しい。用がないなら帰れ
「いや、最近どうにもキャラバンが金欠らしくてね。金塊の横領でもあったのではないかと調査しているんだよ
「あったぞ
「えっ
「えっ、てなんだ。言っとくが俺じゃねぇぞ。キャナルが菓子を買い食いするのに使ってたからな。叱って自分で稼いで返させておいた
「なんと。では事件は解決していたのか
「この俺様が不審な金の動きを見逃すかよ。で、話は終わりか
「そうだね。ああ、せっかくだから金欠解消のためにアドバイスをもらえないかな
「はん。情報だよ。何よりも大事なのは情報だ。今だったらネロが大雨で浸水してんだろ。その情報をどう活かすかが手前の脳みその使いどころだろうよ
「つまりイベントを活用することだと
「それに振り回されるようでもいけねぇけどよ。必要もないのにハネッコを進化させたりとかな
「ああ、捜査は足でしろ、と言うしね
「わかってるじゃねぇか。特に自分で集めた情報ってのは千金の価値があるもんだ。向こうからやってくる情報に碌なもんはねぇ。情報収集に使うにしてもこのキャラバンってのは実に便利だぞ。おまけに持ち主は各種族の庶民から王侯貴族にまで信用されてるしな。この状況ならよほどのぼんくらでなきゃ指先だけで巨利を上げられるってもんだ
「うーん。よくわかったよ。ありがとう、ヴィンガ

「話は、本当に、それだけですか?
「うおおっ!? アリアロ、てめぇいつから居やがった?
「何分、影の薄い性質でして
「最初から僕と一緒にいたよ? 挨拶もしたよね
「……あー、最初に感じた違和感はそのせいだったのか。抜かったぜ俺としたことが
「アリアロ、何か気付いたことでも?
「いえいえ。ただ、時は金なりとよく言っている割に、やけに饒舌だなと思いまして。それに、キャナルの買い食いを見咎めておいて、その程度で済ませるのも貴男にしては不自然な気がします
「……けっ。分が悪いや。ほらよ
「おっと。……このゴールドは?
「おおかた、罰金と称して余計に稼がせ、上前をはねた。そんなところでしょう
「見ていたように言いやがるな、面白くねぇ。そんなことよりアリアロ。リザードマン領にはいつになったら招待してくれるんだ。この不穏な世の中だ、新しい土地にはいくらでも商機があるだろ
「不穏な世の中だからこそ、自国が貴男の食い物にされるのを座視することはできませんよ。私はまず平和を望んでいるのです
「わかってねぇな。経済的な結びつきこそが戦争の抑止力になるんじゃねぇか。心配するな、天秤が傾きすぎねぇようにバランスはとるさ
「……なるほど、一理ありますね。わかりました。では情報をお分けしましょう
「おっ、やったねヴィンガ。何よりも価値があると言ってた情報だよ!
「……いや、やっぱりやめておく
「おや、どうしてだい?
「さっきも言ったろ。向こうからやってくる情報なんて碌なもんじゃねぇって。どんな操作されるかわかったもんじゃねぇや
「賢明なことです

「おつかれさまです。さすがは名探偵ですね。見事に事件を解決なさいました
「う……ん? そうだっけ。いやまぁ僕にかかればこんなものさ!
「今日は有意義な話ができました。それでは私はこれで
「ああ。次の事件でまた会おう!


いつも見ていますよ(壁の中にいる!)

ルキオン

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