四季(前科8犯)の旅日誌

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治安国家。


子を持つ親は、どんな些細な事件であろうと、

我が子を心配し、

もし何か異変があれば、

身を挺して子を守る気概を持っているだろう。


リアルの地では最近、痛ましい事件が続いている。

新聞、ラジオ、テレビ、ネット。

弱き者を守ろうとしているにもかかわらず非難され、
強き者の存在に声を殺し、
日常が、突然、非日常に変わる。

平穏な生活を望む。
ただそれだけのことが、如何に難しいことか。

「普通」ということが最も難しい生き方であると感じる。


親というものは、

子供の帰りが少し遅くなるだけでも、

子供が帰ってきて少し元気がないだけでも、

子供が少しせき込むだけでも、

心配してしまうものなのである。


遠く離れた地で起きた事件でも、

同じようなことがないように祈るものである。




そんな親心はリアルの地だけではない。

リアルの地に住まう親たちも、

同様に我が子を案じ、

眠れない夜を過ごすこともある。


前回、
イアルの地に住まう種族について話をした。

「ヒューマン」領の複雑な国家関係について触れたと思う。


国家の乱立、

独自勢力、

協力と脅迫。





ヒューマン領に、1つの廃墟がある。

かなり昔に捨てられたであろうその廃墟は、
広い庭には雑草が生い茂り、
廃墟の壁は雨風にさらされボロボロである。

廃墟の中に一歩足を踏み入れると、
今にも崩れ落ちそうな階段が目の前に現れる。


まさに廃墟である。


しかし、よくよく目を凝らして見ると、

細部まで丁寧に彫られた柱の彫刻、

朝日に照らされるとキラキラと光を放つ青い屋根、

左右対称に作られ、かつては様々な花の香りで
彩られていたであろう庭、

薄汚れていたとしても、

その廃墟は、

いや、

その館は、

今もなお、その優美で可憐な姿を安易に思い出させてくれる。


高原の隅に、
おどろおどろしくも、
優美な姿を見せるその館。


リプトン伯爵の館である。


リプトン伯爵はすでに亡くなっており、
管理するものもいない。


捨てられた館は、
その雰囲気から「お化け屋敷」とも呼ばれている。

館の近くにあるフォルカ村の子ども達は、

小さいころ、何か悪いことをすると

「リプトン伯爵のところに連れてくよ!」

と、親に叱られたものである。

そういわれた子供たちは皆、泣きながら謝り、
自分がしたことを反省するのだ。

まぁ、数日後には忘れているのだが。


子ども達は、怖い話が好きである。

リプトン伯爵の館にまつわる怖い話といえば、

「子供の笑い声が聞こえる」
「大人たちが騒ぐ音が聞こえる」
「誰もいないはずなのに蝋燭の明かりが見える」

などである。


しかし、

これらは、

ここに住まう者たちが出している本当の音である。

そして、

ここに住まう者たちは、生きている。

「犯罪者」の定義が「国の規律を乱す者」とすれば、彼らは「犯罪者」である。



故リプトン伯爵の館を根城にしている盗賊、


「無頭団」


ヒューマン領では名の知れた盗賊集団である。

犯罪行為を悪いことと思っておらず、

盗賊集団特有の闇纏う雰囲気はない。


みな明るく、
楽しく、
盗む。

勿論、善い行いではない。

それ故に、王都ヴァルメルを守る黒角騎士団からはマークされている。

しかし、
市民は無頭団を悪くいうものは少ない。


「義賊」


そう、

彼らは悪事を働く裕福なものから盗み、
不自由な生活をしているものへ施しを与えるのである。


無頭団に所属するものは、老若男女様々である。


そして、子どもも多い。


ある盗賊団では、子どもを攫い、売り飛ばす集団も多い。

では、無頭団の子どもたちも売り飛ばされるかというとそうではない。

子ども達は皆、元気で、笑顔で、楽しく過ごしている。

もともと、ここにいる子供たちは親がいない、もしくは親に捨てられた者たちである。

お腹を空かし、

寒さに震え、

路頭に迷っているところを、ある若き男に拾われてきたのである。



ロディ・サバラス



若くして「無頭団」を率いる頭領である。


イアルの歴史は今、
かつてないほどに複雑に絡み合い動いている。

その動きに、
なんの関係もないはずの彼らも巻き込まれるのである。


ヒューマン領の豪商の娘が誘拐され、

黒角騎士団はロディが犯人だとして指名手配にかける。

ロディは無論誘拐などしていない。

そして時を同じくして、
無頭団の子どもたちも誘拐されるのである。

誘拐された子どもたちが、
「トランブル太守国」に売られていくという情報を手に入れたキャラバン一行は、

トランブル太守国に向かい、
新たなる災いに出会うのである。


災いの言う「ヴァーミッドの一族」とは。

災いの能力とは。

永遠の命とは。

謎は深まるばかりである。


ロディはなんとか子どもたちを取り返し、

あの廃墟に向かう。

家に、向かう。

子どもたちの笑顔を見て、

ロディも同じように笑う。






彼らは「犯罪者」である。

そして、

彼らは「家族」でもある。

血の繋がりはない。

しかし、ロディにとって、

親のいた事のない彼にとって、

仲間たち、

子どもたちは、

「家族」なのである。




さて、

「家族」の繋がりを大事にするのは、
盗賊団だけではない。

そもそも、
その国は「家族」によって構成されているのである。


独立国家「ゼンカハッパリア」


特殊な国教により治められている国家である。

平和に思えたこの国にも、
一瞬の緊張が走った未遂事件があった。

以下は、国王が2時間かけて国務から帰ってきた後、「ツマゼンカ」から聞かされた、「ムスッコゼンカ」と「ツマゼンカ」の会話を再現したものである。


「ただいま」
「おかえり」
「あのさ、今帰ってくる途中でさ」
「うん」
「前からおじさんが歩いてきたの」
「おじさん?知ってる人?」
「ううん。知らない人」
「それで?」
「うん。でね、その人がね、なんか持ってるの」
「なんか?」
「うん」
「なんだったの?」
「最初分かんなかったんだけどさ」
「うん」
「なんかね、包丁みたいなの持ってたの」
「包丁?!」
「うん」
「そのおじさんになんか言われたの?」
「ううん。そのまますれ違ってどっかいっちゃった」
「最近色々起きてるから怖いね。なんかあったらおっきい声で助け呼ぶんだよ」
「分かった」



以上が、国王が2時間かけて帰ってきた直後、
汗だくのまま聞かされた話である。

お風呂入ってからでいいか聞いたが、
もう寝るから先に話すといわれ、
身体がベタベタしてて気持ち悪い中、
聞いた話である。


この話を聞いて、
一般の人であれば警察に連絡する事案である。


しかし、国王、そしてツマゼンカはこの話を聞いた瞬間に思った。
















包丁じゃない、鎌だ。と。

















ハッパリア国の周りは、農村である。

道をトラクターが走り、

近くの沢にホタルが出る。

庭にはサワガニが迷い込み、

回覧板には「クマが出ました」と書いてある。

今この時に聞こえる音は、カエルの鳴き声だ。


昔から住んでいる人達は、近くに畑を持っている。

家から畑に向かい、野菜を収穫するために鎌を持ち歩く。


「刃物をもった男がうろついている」

これだけ聞くと身の危険を感じる。

しかし、

「刃物をもった男がうろついている」

が、

「収穫のために家から鎌を持っていく」

に、

すぐ変換できるのどかな国に住んでいて、

不便ではあるが、良かったと思う国王であった。


おわり。


四季(前科8犯)

コメント

26

四季(前科8犯)

ID: fkdfpjcdrzxt

>> 23
ギンコさん
昨夜神様の料理おいしいって食べてたら、
「天才だから」
と言っていたので、神様兼天才という存在に進化しました。