※素人の二次創作ライトノベル風です。地の文をほぼ用いてません。
※オリジナル要素ばかりです。既存キャラクターは出ません。
※世界観の独自解釈を含みます。
※流血等の描写も多少ながらあります。
※全十四話となってます。不定期更新。
※以上です。石はここにあるので構えながらお読みください。その後、自由にお投げください。
……
空から現れる黒い獣。
エニグマから生まれる魔獣。その正体等は一切不明。
邪神が送り込んできた、と語る者もいる。
だからこそ、何をおいても研究する価値がある。
「そう、これはまさに、千載一遇と言える……」
偶然、否、運命と言おう。
私に舞い降りた、奇跡的、運命的な出会い。
これさえあれば、私は、否、私ならば。
「この世界を牛耳る事も……ふ、ふふ……ふはは……!」
……
雨が降っている。
屋根からポタポタと、雨水が滴る音がする。
寒い。……寒い?……わからない。
暗い。誰もいない。雨の音以外、何も聞こえてこない。
……ううん。
声が、聞こえる。
私を呼んでる、声が聞こえる。
でも、それが誰なのか、私にはわからない。
聞いた事がない声。声……これは、声なのかな。
何と言ってるのだろう。何を伝えてるのだろう。どうして私を呼んでいるのだろう。
何もわからない。私には、何もわからない。
ただ一つだけ、私にわかる事。
「……私は、独りで」
私は、だれ?
……
「――以上が現在の報告となります」
「ご苦労。しかし、肝心の奴は依然として行方知らずか」
「はっ……捜索範囲を広げてはいますが……」
「早く見つけるぞ。あの狂人を野に放ったままでは危険すぎる」
「はっ。それでは、失礼致します」
「……ふぅ」
全く、厄介なものだ。
ただでさえマクマミアやギュリアムの独立問題もあるというのに。
加えて空から現れるあの魔獣……そしてそれに魅入られた狂人。
「……はぁ」
溜息ばかりしか出てこない。
他種族との争いも実質的には解決したわけではない。
魔獣の存在があって、表面上は静まってるだけに過ぎないのだ。
いつ何が起こるか、わからない。やれやれ……。
「エクセ隊長!」
「……ノックぐらいしろ、どうした?」
「し、失礼しました。……魔獣が再び出現しました。場所は――」
……
「……」
ここは……私は、確か……
「そうだ……あの子を……」
……救えなかった。私はあの男に殺された。
なのに、何故こうも意識がはっきりしているのだろう。
身体も……動く。だけど……。
「ここは、どこなの……?」
記憶にない場所。少しだけ広い空間のようだけど、誰かがいる気配はない。
中央に……これは、何かしら。鉄製の暖炉のようにも見えるけど……。
「……!誰!?」
誰もいないはずの空間。突然、その声は私に響いた。
辺りを見ても、やはり誰もいない。
「……?……え」
しかし、その声は私に続けて話しかけてきた。
姿は見えない、しかし、その声の主はここにいるのだという。
「……」
私は声の主に、聞ける限りの事を全て聞いた。
ここはどこなのか。私は殺されたはずなのに、どうしてここにいるのか。
あなたは誰なのか、これは一体何なのか。
その声の主は全ての質問に答えてくれた。
そして同時に、私がするべき事も教えてくれた。
「……わかったわ。いえ、それ以前に私には選択肢がないもの。
でも嫌ではないわ。私はあの時本当に死んでいたのだから。むしろ、あなたには感謝をしなきゃいけない。
まずは……えぇ、これの扱い方を学ぶ必要があるわね」
……
「雨に降られるなんて今日はついてないな、スタード……」
「バウ」
アトリム高原へと抜ける森の道。
俺とスタードは盛大に雨に降られ、その中を走っていた。
「今日中に王都は無理そうだな。途中でどこか雨宿りができればいいんだが……。
スタード、何か見つけたら……どうした?」
俺のやや後方を走っていたスタードが足を止め、森の奥を睨んでいる。
オオカミの鼻や耳が何かを捉えたのだろうか。
スタードに近づき、森の奥をじっと見ると……かすかに小屋らしきものが見える。
「でかした、スタード!誰か住んでるかもしれないし、雨が止むまで使わせてもらえないか聞いてみるか」
頭をぽんと撫でるように置き、俺は道を外れて森の中へと入ろうとする……その足を、スタードは腰に下げた俺の剣、鞘を咥えて制止する。
「……」
付き合いの長い俺にしかわからないかもしれない合図の一つ。
スタードが鞘を咥える時、それはその先に何かがいる、という事。
そしてそれは大体、ビースト……それも危険性のある奴である、という事。
現時点では何も見えないし、何も聞こえないが……ヒューマンの俺にはわからないだけで、スタードにはわかる事なのだろう。
「わかった、警戒していくぞ」
どちらにせよ、小屋があり人がいる可能性のある場所で何かしらのビーストがいる、というのは危険だ。
人がいるとすれば、知る限りではこの辺りに集落や村の類はなかったはずだから、森に隠れ住む変わり者か、木こりの類だろう。
草木を分け、木々の間を通りながら小屋へと接近していく。
雨はいまだに止む気配がなく、そして何かが動く気配もない。
……だが、近づいていくとわかる。確かに、何か妙だ。時間はもうすぐ夕方に差し掛かる、森の中だという事もあってだいぶ薄暗い。それなのに、小屋からは明かりが見えない。
いや、明かりが見えないだけなら誰もいないのだろう、というだけの話。
しかし……ここから見るだけでもその小屋の窓が開いているのがわかる。誰もいないなら窓は閉めるだろうし、誰かいるなら雨が降っているのだから窓を閉めるだろう。
単に戸締りが、というだけなら考えすぎの一言で済む。だが、スタードが見せた合図が何かある事を示している。
この付近はあまり開拓もされていない……考えれば考えるほど、嫌な予感しかしないな。
「……」
その予感は早くも的中した。
通りで窓が開いたままなわけだ。
「この崩壊は……自然的なものじゃないな。ところどころに焦げ跡もある。
だが内部には見られないあたり、火事ではない、外から襲われたのか……?」
俺達が見つけた小屋はすでに半壊状態だった。反対から見ればそれはひどいもので、居住できる状態ですらない。
雨水に晒され、家具だったものは破壊されている。……内部をよく観察すると、切り傷もある。
人為的なものか、それともビーストの襲撃か、特定するのは難しいが……。
「スタード、お前が警戒してたのはこれ……?」
あれは……地下への階段か?……強引に押し潰すように閉鎖されていて、もう降りれそうにないが……。
ここが狩人等、森を住処としている小屋なら地下室を保管庫として使う例はそう珍しくない。
しかし……ここはそういった小屋ではない。ほとんどが破壊されてるものの、その残骸として残ってるものがいくらなんでも質素すぎる。
狩人等が住むような、それらしき痕跡は見当たらない。なら、この地下室は何のためにあって……何故こんな形で封鎖してあるんだ?
それにこの感じ。壁や床、家具の状態から外に晒されたのはそれほど前ではなさそうだ。二日か三日前……といったところか。
……ん?この足跡は……。
「バウッ!バウッ!」
「!どうした、スタード!」
いつのまにか外に出ていたスタードが反対の方角へ向かって吠えている。
その目線の先を追うと……そこには大きな獣がずしずしと歩いていた。
「……!あれはバビルサ……それに咥えてるのは、まさか……!」
「バウッ!」
小屋を一歩出て巨大な猪、バビルサに向かって駆け出す。それに少し遅れ、スタードも後に続く。
小屋の中には足跡が二つあった。
一つは大きな獣の足跡……これは目の前にいるバビルサのものだ。
もう一つは……人間の足跡。それも比較的小さく、そして裸足の跡だった。
雨に濡れた床にしっかりと残っていたその痕跡はその大きな獣の足跡によって途中から踏み潰されていた。
「うおおおお!」
わざとらしく、俺は声を荒げてバビルサへと接近する。
スタードが吠えた事で奴の足はすでに止まり、逃げる様子もなく咥えた人……おそらくまだ子供を地面へと放し、興奮した様子でこちらを見据えてきた。
鼻息を荒くし、地面を蹴る動作を見せる。このまま突っ込めば突進を確実に受ける事になるが……。
「スタード!」
「オオォン!」
こちらの合図に合わせ、スタードが吹雪を吐き出す。
それによりバビルサの地面は凍結、足も地面に張り付き、動作を停止させた。
その隙に地面へ倒れる、いまだ反応を見せない子を担ぎ、いったん離れる。
「ブルル……!」
「ガァッ!」
地面から足を離し、奴から見れば大事な獲物を取られてしまった事でこちらを睨みつけるバビルサだったが、即座にスタードが襲い掛かった。
しばらく頼む――俺はスタードを一瞥し、壊れた小屋へと戻った。
「おい、しっかり……っ」
……女の子だったのか。
真っ黒な長い髪に、シーツのような長い白いシャツ。……それが腹部を中心にべったりと赤く濡れて広がっていた。
おそらくバビルサにやられたのだろう。脇腹が抉られている。もう息も……ない。
「……くそ」
そっとその場に寝かせ、俺は立ち上がり、剣を抜く。弔うのは後だ。先にスタードの元へ戻らないといけない。
仇討ち……というわけではないが、せめてそれぐらいはしてあげよう。
スタードの方へ戻ると、どうやらうまく立ち回ってくれたようだ。バビルサがこちらを追ってこないように威嚇しながら戦闘行為を続けてくれている。
バビルサは力が強いが、猪というだけあって猪突猛進、前面への直線的な攻撃が脅威なだけだ。
スタードもその事を理解しているのか、常にバビルサの側面、もしくは背後に回って飛び掛かっている。
しかしその巨体はタフさもあり、スタードの攻撃だけでは致命傷にはなりそうにない。
「スタード!」
俺の呼びかけにスタードは後方へ飛び、入れ替わるようにバビルサへと斬りかかる。
「ちっ……!」
だが、バビルサの胴体は何重にもなった鎖のように分厚く、刃が通らない。
大きく吠えるものの、たいしたダメージにはなっていないだろう。胴体はダメだ。いくら斬りかかっても致命傷には至らない。
なら、狙いは……頭部。斬撃が通用しないなら、一突きで仕留めるしかない。
「……」
スタードを一瞥する。頭部を狙うには、一度足を止めさせた方がいい。
もう一度、スタードの吹雪で足を止め、そこを一気に突く。
剣を強く握り、俺は一歩駆け出す。バビルサがその動きに合わせるかのように、地面を蹴り睨みつけてくる。
そして地を駆け出すタイミングでスタードの吹雪が地面を迸り、再び足場を凍らせていく。
確認と同時に俺は両手で剣を構え、頭部へと目掛けて接近する。
「……っ!?」
距離を詰めた一瞬、凍っていた足がすぐに地面から離れ、鋭い牙がこちらへと向けられる。
しまった……さすがに二度、同じ手は通用しないか……!
武器を構えなおし、突き上げてくる牙を防御する。まるで金属がぶつかり合ったような音がし、強い衝撃によって俺は後方へと吹き飛ばされてしまう。
「ぐぅ……!」
運が悪いのか、木に背中からぶつかってしまいその場で膝をつく。
前方を見れば、バビルサが地面を蹴って今にもこちらへと向かってきそうだ。
まずい、回避しなければ……!
「……グルッ……!?」
「バウバウッ!」
「……?」
なんだ?
バビルサの足が止まり、スタードが強く吠えている。
二匹が同時に、崩れた小屋の方を見ている。
「……な」
そこには、黒い渦のようなものが小さく出来上がっていた。
「なんだ……あれは……?」
渦は次第に少しずつ形を作っていき……何か、尾のようなものへと変化していく。
そしてそれは小屋から伸び、一直線でこちらの方へと向かってきた。
「!スタード、避けろ!」
とっさに俺は身構える。それの動きは早く、ここに吹き飛ばされてなければ俺は直撃を受けていただろう。
スタードは……よかった、なんとか避けたようだ。だが……。
「……嘘だろ」
バビルサの胴体が抉られ、その場には足だけが残っていた。
黒い尾は次第に小さくなっていき、小屋の方へと戻っていく。
それと同時に、恐る恐るといった感じでスタードもこちらへ近づいてくる。
「……」
剣を杖にして立ち上がり、警戒しながら小屋の方へ近づく。
あの小屋にはあの娘しかいなかったはずだ。今はもう黒い渦もなくなり、尾も見えない。
一体何が起きて……。
「……は」
小屋にはあの娘がいた。
……だがそこにいたその娘は、すぅすぅという寝息を立てて、抉られた腹部が元の白い肌に戻っていた。
赤い血で濡れた、白い服を着ながら……。
――これが俺、ツヴァイとその相棒スタードの気ままな旅路を大きく変化させた出会いの始まりだった。
コメント
1
禍鬼
ID: a3jeggkpwzkt
凄い…!引き込まれますなぁ!(*´∀`*)続き気になります!
2
にゃんこラジオ局
ID: ya5ze9qu2yie
全14話!長編ssにとてもワクワクしております!
3
ソフィア
ID: h8qt3qyk8d7s
続きを楽しみにしています(*´▽`*)
4
狐白
ID: 8rnr4jkaag7p
ぐっ…
いいところで終わった…!
不定期更新待ってます(´౿`)
5
佐久間
ID: ef4x7ud2mjuf
コメントありがとうございます。
拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします。