~ Prologue ~
これは、
ある場所、ある時代の、
存在しないモノの物語。
~ 1. 意志のないモノ~
私たちは、何も無いところから産まれた。
産まれたという言葉が正しいかもわからない。
何も無いところに突然発生したといってもいい。
きっかけがなんであるかはわからない。
ただ、
私たちが仕えるべき「主」が存在した瞬間から、
私たちも存在した。
私たちはなにも考えない。
私たちは何も感じない。
私たちは意志を持たない。
指示されたこと、
「主」が思ったこと、
それに従い動くだけのモノ。
目的や、
理由など、
私たちには与えられない。
ただ、
選ばれた者に従うだけ。
ただそれだけのモノであるはずだった。
~ 2. 存在しないモノ~
私たちは、なにもできなかった。
ただ、「主」を見つめることしかできなかった。
「主」が、何かを命じることはなかった。
私たちは、なにも与えられなかった。
しかし、
時が経ち、
時が経ち、
「主」は私たちを見て、声を上げて笑うようになった。
私たちが少し動くと、
「主」は私たちの動きを追い、
そしてまた笑う。
私たちは、存在しないモノだ。
しかし、
「主」には私たちが見えている。
そして、声を上げて笑う。
…
「私たちはなんのために存在する?」
「存在していない」
「しかし私たちは存在するか否かを考える」
「つまり存在する」
「なぜ存在する?」
「主のために存在する」
「主は何を望む?」
「…」
「主は何を望む?」
「…わからない」
「では私たちは何をすればよい?」
「…私たちは主に見られる」
「主に見られることが私たちの存在する意味か?」
「…そうかもしれない」
「…私たちは、主に見られ、どう思う?」
「…わからない」
「何がわからない?」
「なんと表すものなのか、わからない」
「…そうだ。わからないのだ…」
「しかし」
「しかし」
「守らなければならない、主を。」
~ 3. 守るべきもの~
私たちは、意志を持たないはずであった。
しかし、
私たちは、
「主」を守ることが存在する意味だと悟った。
「主」が思うこと、
「主」が考えることが、
私たちには分かるようになった。
「主」が嫌だと感じたら、
鏡を割った。
「主」が痛いと感じたら、
家を揺らした。
「主」の意志を他の者達に伝えるために、
気付かせるために、
間接的ではあるが、
行動する。
そうすれば、
「主」を守ることができる。
私たちが、
「主」を守るのだ。
~ 4. 与えられたもの~
「じゃーあなたはロイスね!」
「…」
「それであなたがドラクね!」
「…」
「2人ともどうしたの?おなかいたいの?」
「…」
「名前だよ?名前がないとよべないでしょ?」
「…」
「そう!これからあなたはドラク!」
「…」
「ロイス!ステキな名前でしょ?」
「…」
「…」
「きゃはは!ドラク!ロイス!」
…
「ドラク、どうだ」
「ロイス、なんだ」
「これはなんだ」
「わからぬ、わからぬが」
「あたたかい」
「やわらかい」
「主の笑うところを見ると」
「主の楽しそうなところを見ると」
「やわらかい」
「あたたかい」
「ドラクよ、わたしは」
「ロイスよ、わたしは」
「いつまでも主を守ろう」
~ 5. 理解されないもの~
「誰と話をしてるのっ!」
「ドラクとロイスだよ…」
「何を言ってるのっ!誰もいないでしょ!」
「2人ともいるよぉ…」
「やめてちょうだい!変なこと言わないで!」
「おかあさんごめんなさい…」
「…なんで…なんで私ばかり…」
「おかあさんごめんなさい…」
「なんなのよ!私が悪いことをしたというの!?」
「ごめんなさい…いい子じゃなくて…」
「うるさい!このっ!えっ…」
バンバンバンバン!!!!!
「いやぁ!なんでなのよ!何も無いじゃない!」
「ドラクだめだよ!おうちを揺らしちゃだめ」
「変なこと言わないで!あんたなんか…あんたなんかぁ!!!!」
~ 6. 与えられないもの~
「いつ頃気づかれたのです?」
「小さい頃から何も無いところを見ていました」
「ほう」
「言葉を覚えだしてからですかね…」
「会話をするようになったと?」
「えぇ…でもそれだけではないんです」
「…と、いいますと?」
「機嫌が悪かったりすると、鏡が割れたり…」
「なるほど」
「妻がこのままでは何をするか…もう我が子と思えないと…」
「…分かりました。このままではお互いよくないでしょう。研究所でお預かりします」
「…はい。よろしくお願いします」
…
「おじさんだぁれ?」
「おじさんは先生だよ」
「せんせい?」
「そう。これから君は学校にいくんだ」
「がっこう?」
「そうだよ。お友達がたくさんいるよ」
「おともだち?ドラクとロイスがいるよ?」
「…君はお友達がもっと欲しくないかい?」
「んー、わからない」
「なかよしが沢山できると楽しいよ?」
「おかあさんとおとうさんは?いっしょ?」
「…いや、ふたりは家で待っているよ」
「…いきたくない…」
「…」
「…」
「うん。分かった」
「?どうしたんだい?」
「ドラクとロイスも一緒にいてくれるって」
「…そうか。なら安心できるね」
「…さみしいけど…2人がいるなら…」
…
「ドラク、どう思う?」
「ロイス、私たちは主を守るのだ」
「私たちがついていれば安全だ」
「母親といるより安全か?」
「そう思う。母親は危険だ」
「そうだ。主を傷つけかねない」
「私たちがいれば主は安心だ」
「そうだ、いままでのように」
…
…
…
~ 7. 変わりゆくモノ~
「ドラク、これはなんだ」
「ロイス、わたしにもわからない」
「この者達と主を近づけてよいものなのか」
「主の両親、先生、ほかの者達とは違う」
「わたしもそう感じる」
「主も何か変わった」
「楽しそうにしている」
「あぁ、いいことだ」
「これはいいことなのか?」
「いいことだ」
「キャラバンに乗る者達も私たちのことを信じていない」
「存在を信じていない」
「しかし」
「しかし」
「主を傷付けまいとしている」
「主を守ろうとしている」
「…」
「…」
「…」
「ロイス、私たちは間違っていたのか」
「ドラク、私たちは間違っていたのだ」
「主が両親から恐れられたのも」
「先生から痛いことをされたのも」
「主が弱いからではない」
「主が間違えたからではない」
「私たちが」
「私たちが」
「私たちがいたから主は恐れられたのだ」
「私たちが守ろうとすればするほど」
「私たちが存在すればするほど」
「主は傷つくのだ」
…
「主は私たちがいなくても平気か?」
「主を見てみろ」
「楽しそうである」
「嬉しそうである」
「私たちがいなくなれば」
「私たちが存在しなければ」
「主は幸せに暮らせる」
「ではどうする」
「私たちは主を守るモノ」
「私たちは主を守るモノ」
「主を守るため」
「私たちはいらないモノとなろう」
…
…
…
~ 8. 愛するもの~
きょうは、
みんながたんじょうびをおいわいしてくれたよ。
すっごく甘いケーキもあったし、
おなかいっぱいのおりょうりをたべたよ。
エミリーおねえちゃんも、
いつもよりもたくさんぎゅーってしてくれたんだ。
ハッピーバースデーのお歌もみんなでうたってくれて。
とっても楽しかったんだ。
すこしだけオトナにちかづけたのかな?
ドラクとロイスに、
みんなといるからもう大丈夫って、
オトナになるんだから大丈夫って、
あんしんしてお家で、
ドラクとロイスのおとうさんとおかあさんと
いっしょにくらせるように、
マルマ、
がんばるね。
だけど、
やっぱりすこしさみしいから、
ドラクとロイスのケーキ、
おへやの窓においておくからね。
こっそりたべにきてね。
マルマ、
ドラクとロイスのことみたら、
いかないでー!っていっちゃうかもしれないから、
こっそりたべにきてね。
ドラク、
ロイス、
おたんじょうび、おめでとう。
~ Epilogue ~
「ドラク、これでよいのか」
「ロイス、これでよいのだ」
「なにも変わらぬではないか」
「主は私たちがいることに気づかない」
「そうだが。近くにいることに変わりはない」
「当たり前だ。主を守るのが私たち」
「主を守るため、いなくなるのではなかったか」
「主を守るため、姿を消したのだ」
「でも、少し離れたところから見守っていては意味がないのではないか?」
「何故だ?」
「オトナになると主はいったのだ」
「分かっている」
「私たちがいなくてもいいようにと」
「分かっている」
「では何故少し離れたところから見ているのだ?」
「…」
「…」
「主を見守ることに」
「主の近くにいることに」
「意味は無い」
「ただ」
「ただ」
「なぜか」
「なぜか」
「近くにいたい」
to be continued.
__________________________________
T.P.
コメント
1
ンコ
ID: ezi7w2du2ba7
胸んとこがきゅーってなりました!
2
りずモ子◓ᴥ◓
ID: wt5szy98u8yq
涙が溢れるんですが…゚(゚´Д`゚)゚
なんか、ありがとうございますっ!!!!!!
3
オルガ
ID: iad65ypbxyak
マルマ会の皆さんにも読んで頂きたい(T ^ T)
このシリーズで四季さんが取り上げて下さるキャラのチョイスが秀逸過ぎて、そんなとこでもセンスを感じざるを得ません╰(*´︶`*)╯
4
❁はる❁
ID: 3r2tvcimsan3
あれ、なんか涙が......。
絶対最後にオチがあると思ってたけど、感動のストーリーでした!!
5
鷹緒〄
ID: hn27bkur9uby
まさかの最後まで素敵story(⸝⸝o̴̶̷᷄ o̴̶̷̥᷅⸝⸝)♡
マルマとっても好きになりました!
心が揺り動かされました♡
6
綾
ID: ex79dvc2uhsz
涙…
7
ダ◉ᴥ◉イ
ID: bxjskiccaue8
四季さん、ありがとうございます!!
8
ディレ
ID: ipaftn23taqi
仕事中でしたが、感動で目から汗が…。
9
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 1
ンコさん
誕生日に便乗しました(*ノдノ)テレッ
10
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 2
りずさん
マルマ会に敬意を表して書きました。
マルマのストーリーはゲーム内で完成されているので、
違った視点で書いてみようと。
読んでくれてありがとです!
11
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 3
オルガさん
マルマ会に敬意を表して書きました。
誕生日だったので…ストーリー見直していけるかな?と。
ゲーム内で1番心にくるマルマ…
12
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 4
はるさん
このシリーズを何度か書いていますが落ちはないのです!
たまにはね、ほら、ちゃんと書かないとね、
変な人と思われちゃうからね!
13
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 5
鷹緒さん
ステキなんですよ!
ストーリーシリーズ絶賛公開中ですよ!
ただの妄想なので人気ないんですよ!
14
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 6
綾さん
最近よくお見かけしますぞ!
マルマはねー…ほんとに…やられるよね…
15
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 7
だいちゃん!!!
先日は参加させていただきました!
楽しかったのでお礼の意味も込めて頑張って書きました!
マルマ中心じゃないけど許して…
16
四季(前科8犯)
ID: fkdfpjcdrzxt
>> 8
ディレさん
それはね、LCLといってね、リリスの体液ですよ。
ちょうどエヴァ新作の冒頭見てたのでぴんときました!
17
玲瓏の常夜ギンコ
ID: mpz99vwbkac4
何故か無性にマルマを育てたい!(´TωT`)
いや、守りたいー!!ドラグー!!ロイスー!!(*>_<*)ノ
18
シュナイダー.P
ID: d5wtqiwe4bav
マルマ会が楽しかったんだねぇ(ノ´∀`*)
これは四季さんからのお礼だね(*´∀`)♪
19
そんみん
ID: 63m799kwu7sp
会いたいけど頑張るよって気持ちと
大切だからこそ見守るっていう決意と
。゚∵・(ノД`)∵゚。 うわああん
☆6なったらストーリー増えてロイスとドラクが可視化されてマルマと超合体とか言ってた私を誰かしばいてください(´・ω・`)
20
セツナ∞◕ᴥ◕∞
ID: 7yayb3k2vpvi
感 動・・・・・・(;_;)
21
ももちゃ
ID: wdwycxhd8vpp
四季さんヤバい( ノД`)
何これヤバい(つд⊂)
22
完全クガフィート
ID: rqb6nnu3vydd
四季さんお疲れ様です!
やっぱり文才があって羨ましいです(*´ω`*)
マルマお誕生日おめでとう!
マルマからしたら私は弱点ですが、燃やさないように気をつけねばですね!
全国のマルマ会とロイスとドラクが黙ってないから((((;゚Д゚)))))))
23
さーまにあ
ID: azawtdx338fe
うああああああ゚(゚´Д`゚)゚。
うぁあぅぇうぁううぇお゚(゚´Д`゚)゚。
ありがとうございます
ありがとうございます゚(゚´Д`゚)゚。
何回でもいいねを押したいです゚(゚´Д`゚)゚。
24
kiki
ID: ruart6pi2a9z
四季さんは何を書いても天才です.°(ಗдಗ。)°.
マルマもドラグもロイスもいい子(T ^ T)
25
38
ID: 2buafrb67jwv
素敵なストーリーありがとうございます!
マルマ誕生日会の時も見守ってくれてたのかなぁ!?と、ふと思ってしまいました(>_<)