マーサ「汲めど尽きせぬ乙女の悩み、汗と一緒に流しましょう! 温泉の守護神こと、クラウチ若女将のマーサ、ここに見参!! よろしくっ」
ザラ「はい、よろしくお願いします! って、なんだかテンションがおかしいですね」
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「それはもう! 温泉地コラボとなればテンションも上がりますとも! もはやこの私が主役にして主人公と言っても過言じゃありませんとも!」
「あはは……。湯船につかる習慣はオークにはあまりないので、今日は勉強させていただきます!」
「ああ、そういえば。どうしてかしら? こんなに気持ちのいいことは他にないのに。オークの家屋にはそもそも浴槽がないわよね」
「戦になれば家が壊されることもよくあるので、あまり凝った作りにはしないんですよね」
「そ、そうなんだ……。それで、今回はどんなお悩みをお抱えかしら?」
「ええと、そばかすが気になっています。どうしたらマーサさんみたいに白くてきれいな肌になりますか?」
「うふふん、はい! きました、そばかす! お ま か せ あれ!」
「もうなんだか気持ち悪いくらい浮かれてますね」
「おほん、……失礼。そうね、血行促進と新陳代謝の向上という意味では、大抵の温泉で効果が見込めると思うけど、特におすすめは重曹泉! お肌の表面をすべすべにする効果は抜群よ! 俗にいう美人の湯! 弱塩基性で、飲めば胃も活発になったり」
「飲む? 飲んで大丈夫なんですか?」
「もちろん、湯船から直接飲むことはないけど。そう、温泉の利用方法は浸かるだけではありません。飲泉の他にも、蒸気と熱を浴びる蒸し湯、高いところから患部に温水を当てる打たせ湯、温泉蒸気を吸った砂に体を埋める砂湯、複数の温泉を併用することで効果を高める合わせ湯、源泉付近の泥なんかを温泉で溶いて患部に厚く塗ったりする泥湯」
「泥湯なら似た風習がありますよ! 狩りや戦の前には体臭を消すために泥を体に塗りたくるんです!」
「あー、うん。なんというかちょいちょい物騒よね……。まぁ酸性泉みたいに泉質によっては飲めないところもあるけど、大概は単純泉か弱食塩泉だから」
「食塩泉って、しょっぱいんですか?」
「そう。入浴すると体に塩がついて体温を保つので、通称は熱の湯。コラボ先では秋保温泉や塩原温泉がこれね。冷え性なんかには効果抜群!」
「別に冷え性ではないですけど。でも狩の獲物を沈めておけば美味しくなりそうですね!」
「そ、そうね……」
「ちなみに他のコラボ先の泉質はどんなものなんですか?」
「湯河原温泉は芒硝泉、これは飲むと苦いけど、腸を活発にするんだとか。黒川温泉は基本的に硫黄泉。解毒作用が強いけど、皮膚が弱い人が長湯するとただれたりするから注意が必要ね」
「それくらい強力だと効きそうですね! 丈夫さには自信があるので平気です!」
「でしょうね。まぁ黒川温泉や加賀温泉郷は複数の泉質の湯があるから、身体や症状に合った温泉に行けばいいと思うわ。とりあえずこの辺にして、クラウチの湯に浸かりに行きましょうか」
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「今日はいろいろ勉強になりました! 肌も綺麗になった気がします!」
「お役に立ててよかったわ。でも、温泉療養を本気でやるなら数週間か数か月は浸からないと」
「はい! ガムルさんたちにお願いしてみます! あ、そうだ。歌が上手くなる温泉はありますか?」
「歌、かぁ……。うーん、湿気の多い空気は喉にはいいと思うけど。上手くなるにはやっぱり練習を繰り返すしかないんじゃないかなぁ」
「そうですよね、すみません……」
「ああ、謝らないで。そうだ、場数を踏みたいなら旅館のお座敷で芸を披露してみる?」
「いいんですか? やります!」
「えっ!? 本当に? 言っておいてなんだけど、酔客のあしらいって大変よ? 調子に乗ってセクハラしてくるお客とか」
「大丈夫です! 必殺のカウンターで2度とおふざけできない体にしてあげますから!」
「物騒にも程があるって! ごめんなさい、勘弁して……」
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